「幽助、紹介しよう。――こいつが霊界探偵のお前を補佐する……」

です。浦飯 幽助うらめし ゆうすけさんでしたっけ?よろしくおねがいします」

おしゃぶりの幼児……失礼、コエンマ様から紹介されて、私は一歩前に進み出ると
ほとんど年齢の変わらない相手とは言え、やはり失礼のないように
少し頭を下げて、いかにも無害ですと言わんばかりの得意の愛想笑いを浮かべた。

目の前の黒髪をきっちりとリーゼントヘアに固めたいかにも不良風ので立ちの少年が
きょとんとした顔で見つめてくるので、何かまずかったかとヘタレ心で戦々恐々としながら
恐る恐る下から伺うようにこちらも困り顔で小首をかしげると
こらえきれないとばかりにせきを切ったように幽助は笑い出した。

「ぎゃははは!!じょっ冗談きついぜコエンマ!!」

笑いすぎて涙まで浮かべた少年は、ふてぶてしく目の前の小さい少女に指さした。

「こっこんなガキが俺の補佐?――さやかの時も冗談かと思ったが
今度はマジで冗談きつすぎるぜ……ガキは帰ってママのおっぱいでも吸ってな」

続けて小馬鹿にしたように、こんなガキを補佐につけるなんて霊界は人材不足なのかと笑う少年。
ぼたんは慌てて幽助の頭を殴り、女の子に向かってなんてこと言うんだいと説教をした。
その言葉にキョトンと女?と繰り返す幽助にコエンマも続けて怒鳴りつける。

「これ失礼だぞ幽助!!この子はお前の霊界探偵の先輩でもありお前よりも霊力も
そして年齢も年上だ!!ワシの時もそうだが、見た目に惑わされるんじゃない!!」

「……ええええ!?こっこいつ…いや、この人が年上の女の子!?」

じーっと見下ろされ、少し困ったように照れて笑うと幽助も少しうなりながらも納得したようだった。

「まぁ確かに坊主のわりにはかなり可愛い顔してるなーとは思ったけどよぉ。
でもどう見ても、俺より実力があるように見えねぇけどなぁ……」

ボソッといかにもオタクっぽい文化系の女って感じじゃんとつぶやく幽助。
それに、ごもっともですとも苦笑しているとコエンマからお前は甘いんじゃと一喝され
さらにぼたんからも霊丸れいがんが1発やっと撃てる程度の幽助なんかじゃ相手にならないと
謎のフォローまで入れられ少し居心地が悪くなった。

「うーん、えっと確かにこんな子どもぽい見た目だけど幽助さんより先に……
細かく言えば5歳頃には霊界探偵になったから先輩であることは確かかな」

それに、あなたの一つ年上なのと笑うと感心したような声をもらした幽助が
すぐに少しバツの悪そうな顔で苦笑いした。

「そっそうか。すまねぇな。えっとちゃん…じゃなくてさんだっけ?」

「年も1つ上なだけだしと呼び捨てでいいですよ幽助くん」

「なっなら俺も呼び捨てで…後、敬語もナシでいいからさ」

「ん、じゃあ幽助」

少し照れたようにはにかむ少女に幽助の頬が少し赤くなった。
それを誤魔化すように、なぜ補佐をつけたのかとコエンマに問い詰める少年。
コエンマは忘れかけていたのか、その言葉ではたと思い出したように語り始めた。

「本当ならばお前にはもう少し簡単な事件から始めさせたかったが
闇の三大秘宝さんだいひほうを取り返すにはすぐに取りかからねばならない。
だが、駆け出し霊界探偵のお前では荷が重すぎる」

「そこでちょうど日本に戻ったばかりの私に白羽しらはの矢がたったということみたい」

日本に戻ったばかりとやや強調して嫌味でも言いたげな少女に
コエンマはわざとらしく大きなせきをしつつ、とにかく二人で解決してくれと念を押した。

「あたしも霊界探偵助手として二人のサポートをバッチリしていくから
とにかく、仲良くがんばってちょうだいな!!」

ぼたんの華奢きゃしゃな腕を回され、私と幽助は少し困惑しながらも人間界の危機となれば仕方ないと頷いた。

………
……

どこからどうみてもガラの悪そうな不良少年と少年ぽい大きめのオーバーオールを着た
見た目小学生にしか見えない少女という奇妙な組み合わせで街を歩いていると視線がやや痛い。
最初は幽助も俺が誘拐してるように見えないかと悪態をついてきたが
しだいに慣れてきたのか、お互いはそれぞれの霊界探偵となった経緯を語り合っていた。

「凄いなぁ。かれそうになってた子どもを助けようと自分の命をかえりみず車道に飛び出るなんて」

「へへっ。あん時はよ……助けたい一心だったんだ」

「そうか……はぁ~よかった」
「ん?何がだよ」

「あ、いや……新しい霊界探偵が幽助みたいな優しい人でよかったなって」
当時組んでいた二人を思い出して少しセンチメンタルな気分になったが
もう霊界探偵は廃止にすると決めたはずのコエンマの言葉をくつがえすほどの何かをこの少年には感じる気がする。
今度こそ、成功できるといいなとこれから始まる大きな危機にまだ気付かずに笑った。 Page Top