10

10年後誰との結婚生活が見たいですか?
というアンケートを去年にとらせて頂きました。

こちらの夢はそのアンケート結果を元に執筆した番外編です。

本編連載の未来10年後(If)設定です。
アンケートをとった結果の1位だったお相手
10年後の雲雀さんで番外編を書きました。

本編とはほとんど関係ないので、飛ばしても構いません。
それでは始まります↓

「ん……」

朝日の眩しさに目を細める。
ランボ君の十年バズーカにぶつかってしまい
変な煙に飲まれた時は死ぬかと思った。

煙がはれてくると、眩い朝日に目がくらむ。
背中の柔らかい感触と、伸ばした掌をすべるシーツの感触。
あ、ベッドに着地したのかと安心したのも束の間
低い声が隣から聞こえてきて慌てて飛び起きた。

「君……」

え、待って……誰だこの半裸のお兄さん。
気まずすぎて一瞬しか見れなかったが
恐らく年は20代くらいだろう。

もう一度ちらっと見れば、先ほどは驚いたような顔をしていた彼が
何か悟ったような顔でニヒルに笑うところだった。

背中に朝日の柔らかい光をうけ、綺麗な鍛えられた体に白い肌
サラサラの黒髪と切れ長の目が美しい彼は
今まで出会った中でも一番キレイだと思った。

そして、どことなく見覚えが……。

「うそだ、うそだ、これは夢だ」

うつむいて丸くなり現状を受け止めきれずに
ぶつぶつ言いながら、頭を抱えていると
低い艶のある声に名を呼ばれて振り向く。

「なんで私の名前を……?」

後ずさりながら問いかければ
彼は気づかないのと少しだけ不満げな顔をした。

しかしすぐに何か思いついたのか怪しく笑うと
私の手の平をとり、唇を落とした。

男のゴツゴツした手とは裏腹に柔らかい唇の感触に
カーっと顔に熱が集まる。

「えっえぇ!?」

思わずベッドからずり落ちそうになる私に
青年が慌てて抱き留める。

「夫の名前を忘れるとは……噛み殺されたいのかい?」

あ……その台詞、と思ったのは束の間
片手だけで軽々と引き寄せられた。
彼の胸に抱かれながらわずかに香る汗のにおいやら
男性フェロモンやら何やらで頭がクラクラする。

探るように雲雀さんですかと声をかければ
上出来だと言わんばかりに額に唇を落とされた

………
……

座ってても構わないのにとクスリと大人びた笑みを浮かべる青年に
真っ赤になりながら首をふる。

「というか、何でそんなに離れているんだい?
――僕、一応新婚なんだけど」

少し怒気を孕んだ声だが内容はイチャイチャしたいという感じだったので
相変わらず距離を保ったまま首を振り捲る。

「いやいやいや!?わわっ私は過去の私でっ
そっそれに、恐らく雲雀さんの奥さんとたまたま入れ替わっただけですって!?
むしろ奥さん以外の相手とイチャイチャとかまずいですよ!?
あ、でもその前に私は未成年ですし…それに……」

最初は楽し気だった雲雀の表情がだんだん曇りだす。
大きなため息をついた後、頭をガシガシかきながら
昔の自分を責めるような口ぶりの後項垂れた。

「昔の僕がどれだけ足りなかったのか分かったよ。
あっあと、確かに君は10年前のであるのは違いないけど
僕の奥さんであることは間違いではないよ」

「ええ!?ってことは10年後の私が
雲雀さんのおっおおっ」

「は?可愛すぎるんだけど……。噛み殺されたいの?
はぁ、奥さん以外に何があるっていうの?」

少しだけ雲雀さんも照れた……けれど嬉しそうな笑顔に
グハッと母性本能やらがくすぐられ、リア充爆発しろと倒れこむ。
いや、この場合は半分未来の自分も爆発に巻き込まれるわけだけれども。

「それにしても……君って全然変わらないんだね」

ウワッとビックリすると、目線をあわせた雲雀さんが
しゃがみながらムニムニと頬をつまんでくる。

「か、変わらないというのは10年後の私と比べてということですか?」

少しは大人っぽくなっていて欲しかったのにと項垂れれば
慌てて胸は大きくなったと付け足す青年。

「せっセクハラです!!」

「……ごめん」

大丈夫、今よりは大人ぽいからと頬から頭に手がうつり撫でまわす青年に
ふれあいコーナーの動物扱いされてないかと少し不貞腐れる。

「でも、10年後ですら犯罪ぽいのにこれは……」
合法なのかとぶつぶつ呟く青年に小首をかしげれば
すぐに何か思いついたのかイタズラぽい笑みを浮かべ
未来の練習のために新婚ごっこしようかと提案されめまいがした。

「新婚ごっこって具体的に何すればいいんですか?」

真っ赤な顔で問いかければ、ニヤリと笑った彼が
君が奥さんで僕が旦那役だよと切り返した。

「と言っても、今の君には最後まで手を出さないよ。
それはあっちの僕のためにも取っておくさ」

最後までの意味が分からないほど子供でもないので
この人本気だと真っ赤な顔で後ずさる。

「僕はせっかくの休みだったんだ。
君とダラダラ過ごす予定が潰れてしまった。
だから君が未来の君の変わりに僕と過ごしてくれればいい」

なんだ、ただそれだけかと安心していれば
やはりそこは雲雀さん、ただではすまない。

「実は未来の君はなかなかスキンシップに慣れてくれないんだ」

「えっ?はぁ……まぁ、恥ずかしいからじゃ…ぎゃあっ!!」

抱きしめられ悲鳴をあげる。

「だから今から慣れる練習すればいいと思って」

それって犯罪ですと言いかけたが、未来では妻だから合法なのか?
それにはたから見るとただ子供を可愛がっているだけの大人にしか見えないのでは?
私がセクハラだと過剰に騒ぎすぎかと頭の中でグルグル議論している間にも
耳元で低い声が吐息まじりに囁いてくるのでビクッと反応する。

「君は僕のことが好き?」

少しだけ切ないその声色に、はぐらかしちゃダメだと
息をのんだあと、間をおいて応えた。

「わ…分からないです。雲雀さんはいつも怖くて
強くて、でも……優しいときもあって」

あんなに完璧な人。
私には不釣り合いですと呟けばゆっくりと頭をなでられた。

「君は、そのままでも良い。
そのまま変わらずに大人になってよ。
自己肯定感が低いところも昔は嫌だった」

頭を撫でていた手が頬に移動し、頬をさらっと撫でる。

「ただ今なら分かる。君が自分に自信がなかったおかげで
僕だけが最初に気づけたんだ」

「誰も咲いた花の美しさに気づかなければ
僕だけが摘み取ることが出来る。
だから君は黙って花を咲かせることだけに専念してよ」

花の意味も分からずに首をかしげれば
彼は分からなくてもいいと少し切なげに微笑んだ。

「誰にも気づかれずに、ただそこでじっと咲いていて。
僕だけが君を摘み取れる存在だと分かって欲しい。
君の初恋も、君の初めてのキスも何もかも
僕が君の初めてでいたい」

「大丈夫ですよ、私みたいな子を貰ってくれる人なんて
相当な変わり者ですから」

ヘラっと眉を下げて笑えば、彼は少しだけ不満げに唸った。

「今は僕がいるから、そういうことは言わせないよ」

額にリップ音を落とす青年。
頬、首筋と次々と唇を落としていく。

「ひっ雲雀さん!?」

「僕が君のことをどう思っているか分からせる必要があるみたいだね」

対面で抱きしめられ、目線を合わせながら
洗脳めいた愛の言葉が永遠と続いた。

「ひっひぃ!?もっもう分かりましたから!!」

これ以上は心臓が爆発して死にますと叫べば
未来の君も同じことを言うけど死んでないと真顔で返され
掌にキスをされた。

離れたあと、顔がゆっくり近づいてくる。
長い睫毛、10年後の雲雀さんは色気も増して
なんて美しいんだろうとボーっとしていると
目を閉じてと囁かれ、反射的に目を瞑ってしまった。
10年前の僕には内緒だよとクスリと耳元で囁かれ
そのまま唇が重なるあと一歩のところで白い煙に包まれた

目を開ければ心配そうなツナ達に囲まれて安堵した。

「ランボ君がごめんね!!」

土下座しそうな勢いで謝るツナにいいよと眉を下げながら笑う。
私もある意味で貴重な体験が出来たしと思い出して赤くなりそうになるので
慌てて振り払う。

「そういえば、10年後の私がここに来てなかった?」

ツナに問いかければ、あっと声をあげた後に
真っ赤な顔になり、来てたけど雲雀さんがと慌てて濁された。

「え、雲雀さんに何かされてたの!?」

10年後の熱烈な愛を囁く彼を思い出せば
興味もあるし、少しどうなるか分からない恐怖もある。

「いやいや、雲雀さんはむしろ助けてくれたというか」

あーとにかく戻ってきてよかったとこれ以上は聴いて欲しくなさそうな雰囲気だったので
とりあえず、戻ってこれたことに感謝することにした。

そういえばその雲雀さんはとグルグルあたりを見渡していると
慌てて戻ってきた雲雀さんにガバッと抱きしめられて悶絶した。
今日はロマンスが多すぎて体が持ちそうにないと薄れゆく意識の中で
ロマンスの神様を呪いまくった。

おまけ『10年後の彼女はどうなった?』

「あれ……ここは?」

「ランボ!!って……ええ!?だよね!?」
ピンクのネグリジェから覗く胸元に赤面しながら
幼さをだいぶ残したけれど子供よりは大人びた顔立ちに
探るように声をかければ、ツナと抱きしめられた。

元々短い髪だが10年後の彼女はボブカットにし
少しだけ背も伸び、体つきも女性らしい柔らかな曲線を描いている。

10年前だ可愛いねと叫ぶ彼女にたまたま居合わせた雲雀さんが
無言で学ランのジャケットを脱いで彼女に着させる。

「雲雀さん!?ええ、小さい!!可愛い!!」

ぶかぶかのジャケットの裾から小さな手を出して頭を撫でられ
流石の少年も何も言い返すことが出来ない。

しかし周りを見渡し彼女に集まる目線に舌打ちした後
別室に連れていき、出ちゃいけないと釘を刺した。
何かあれば呼んでと言い残して少年も出ていった。

その時になって彼女もネグリジェ姿なのに気づき
ぎゃあと叫び声をあげる。

「ごめんなさい、ごめんなさい、おまわりさんこっちです捕まえてください」

ああ、取返しのつかないことをと頭を抱えていると
真っ白い煙に包まれて、戻れたと安堵した。

と思ったら目の前には若干不機嫌そうな旦那様こと雲雀さん。
10年前の私何をやらかしたんだと青ざめれば
その格好誰に見られたのかと聞かれ、見たやつ全員今から噛み殺しに行くとぼやくので
慌ててとめた。

「なら最後までしてくれたら考え直すよ」

「ん?最後までって何のはな……ああああ」

もう一度10年バズーカあたってくれと願った新婚生活だった。
Page Top Page Top