そろそろ定期テストの時期がやってきた。
並盛地域の中学ではたいていどこも時期が同じみたいで
会えてはいないがLINE越しに皆がテストの話題で持ちきりだった。

了平先輩や山本はテスト期間中は部活がないことが不満らしい。
実は私も美術部に入っているが、普段の部活自体
出席は強制ではないので、テスト休み関係なしに最近は出ていない。

ぼんやりテストが終わったら久々に先輩に挨拶せねばと思いつつ
帰ったらテスト勉強することを考えると憂鬱だ。

普段賢いを装っているオタクだが、実際の私は大の勉強嫌いだ。
自分が好きなことはトコトン追及するタイプなんだけれど
興味がない分野にはピクリとも動かない。

特に、理数系のジャンルが全滅である。
前回のテストで数学で12点を取り、次またひどい点をとれば
強制的に学習塾にぶち込むと親から脅された。

ただでさえ学校の時間も憂鬱なのにこれ以上勉強させる気かとわめいたが
確かに親心も分からないでもない。そりゃあ、あまりにも頭が悪いと
進学にも影響あるからなぁ。

中学二年。そろそろ周りも志望校をチラホラ決めてくる時期。
最近はマフィアだなんだと物騒な話題でゴタゴタしていたけれど
現実を見据えれば高校は日本の高校に通いたい。

「あ〜あ、テストの日だけ学校消滅しょうめつするとか
あ、アレだ…隕石いんせきが落ちて学校がなくなれば……」

「無理だね」

「……げ」

聞きなれた冷たい否定にビクッと立ち止まる。
なんで嫌な顔してるのと聞かれたが
アナタのせいですとは言えない。

「雲雀さんはあの後どうしてたんですか?」

話しかけてきたくせに無言になりやがったので
この空気をだっするべく、勇気をふるい立たせて声をかける。

「変わらないよ……ただ噛み殺してた」

「そこに一般人は含まれてないことを願っています」

とりあえず元気そうでよかった、じゃあまたと回れ右をすれば
腕を掴まれ、足がとまる。

「君の学校もそろそろ定期テストあるよね?」

大丈夫なのと聞かれ、なんで答えないといけないんだという
回答を噛み殺しつつ、にへっと何とも言えない顔で笑った。

必死に口角こうかくをあげ、逃げの態勢をとりつつの笑みに
少しムッとしたようにも見えたが、彼が不機嫌そうなのは
いつものことなので無視して、そのままにごす。

「あ〜、あったと思うんでそろそろ家に帰って勉強しなきゃなぁ〜」

「君、さっきまで勉強する気ないように見えたんだけど?」

さきほどの学校滅びろ発言を蒸し返され、顔に熱が集まる。

「あっあれはっじょっ…ジョークじゃないですかぁ〜!!」

どもりながら答える少女にふーんと雲雀は相槌を打ちつつ
思ってもみなかった爆弾発言を投下してきた。

「君………前回のテストで理数系全部10点台だったよね?」

ヒッと息をのむ。なっ……なんで私ですらも
記憶のかなたへと追いやっていたテストの点数を知っているんだ。

思い起こせば以前もうちの学校に平気で出入りしていた少年。
しかし廊下とかに張り出されるわけでもない個人的なテストの点数すら
把握されているとなると……ますます並盛に私の逃げ場はない。

フリーズして数秒……ハッとする。
この流れはまずい。相手に主導権が行っている。
なんとか無理やりにでも逃げなければ!!

「そうだった!!思い出しましたァ〜!!」

なおさら早く帰って勉強しなきゃーと無理やり腕を払って
速足で逃げ帰ろうと回れ右をした瞬間。

また腕を引っ張られて、前のめりにこけそうになる。

落ちた視線の先、自分の足元が次の瞬間黒い影におおわれる。
少年が上から覗き込んでいるとわかったのは、耳元で降ってきた低い声でわかった。

「僕の家で勉強していきなよ」

嫌ですというまもなく、そのまま腕を引っ張られて連行されていく。
頭の中で子牛が売られていく歌ドナドナが流れ、周りの通行人に
どうにか助けてと視線を送るも、おばちゃんは微笑ましい目で見つめ
おじさんは目線すら合わせてくれない。


WHY!! JAPANESE PEOPLE!!ワイ!! ジャパニーズ ピーポー!!

あれよあれよという間に、いつぞやの大豪邸 雲雀邸まで来ていた。

「はぁ〜、相変わらず大きいや」

今日も両親が不在の中、勝手にあがっていいのかと
恐る恐る門をくぐれば、少年に何ビビってんの?前にも来たよねと言われ
うぐっと言葉に詰まった。

家にもビビってるけど、一番はあなたにビビっていますとは言えない。
思っていても、弱者は口には決して出せない。

「そっそうだ!!せっかく勉強するんですから
みんなでやった方がいいんじゃないですか?」

ツナ達も呼ぼうと提案すると、案の定少年は嫌そうな顔をする。
群れるのは嫌いだとか色々言っているが、ここで負けたら
雲雀さんとマンツーマンレッスンになる!!

それは避けねば!!

「で、でも……雲雀さんも同じ並盛中の生徒が
学力あがったほうがいいじゃないですか!!」

ねと必死に念押ししてみれば、舌打ちしながらも
分かったと小さくうなずいた。

「僕の気が変わらないうちに呼びなよ。
――まぁでも誰も来なかったら噛み殺すから」

この言葉を聞いて、スマホをすぐに連打したよね。
雲雀さんと居ても割と平気そうなツナ達含め
女子が一人なのも悲しいのでハルや京子ちゃん
あとこの前こっそり連絡先を交換したクロームちゃんにも
一応声をかけてみた。

頼む!!だれか一人でもきてくれ!!
心の中で何度も叫び続ける。

………
……

「マジでありがとう!!そしてごめん生贄いけにえの道連れにして!!」

来てくれたツナ、山本、獄寺そしてクロームちゃんに頭を下げた。
連絡から30分も立たずに来てくれたよ。みんな神だよ!!

ツナは全く来たくはなかったが純度100%の同情心からキリキリ痛む胃を押さえてきてくれ
山本はみんなでワイワイ楽しそうだからといつものようにニコニコ顔で登場。
獄寺はツナを雲雀と二人っきりには出来ないと保護者気分でついてきたらしい。

そしてまさか来てくれるとは思わなかったクロームちゃんだったが
骸様に行けって言われたからと律儀に黒曜中のテキストを持って来てくれた。

「そこ、固まって何コソコソしてるの?」

長いんだけどと少し離れた所から釘を刺されたので
なんでもないでーす、ただの作戦会議でーすと苦笑いでごまかした。

みんな……特に怯えモードのツナと私は覚悟を決めて
雲雀という猛獣もうじゅうの待機している部屋へと向かう。

相変わらず今日も噛み殺しモードが爆発しているのか
雲雀さんが来客者にたいしてもイチイチ噛みついてくる。

ツナには今度ケンカしようとか言うし、クロームには
骸と会わせろと詰め寄っていた。

それらをどうにかなだめて、とりあえず一同が着席する。

「さて……まずは前回のテストで赤点取った人いますか?」

私を含めて、ツナと山本、クロームが手をあげた。

「俺……全教科赤点どころか0点なんだけど」
ツナの言葉に、全員どんよりした空気が漂う。
残念だが彼のレベルで今回の勉強会をしていれば一向に終わりそうにない。

とりあえずツナには全教科のテスト点の底上げ、そしてあわよくば
今回こそは赤点回避かいひできるようにとうながした。

山本は数学だけギリギリ赤点を取ってしまったらしい。
私と同じなので山本も私と一緒にまずは理数系を重点的に勉強していく。

「で、クロームちゃんはどの科目がダメだったの?」

賢そうなのになと想いながら尋ねれば、少し間をおいて受けてないとだけ帰ってきた。

「もしかしてテストすら受けてない?」

小さくうなずく美少女。声には出さなかったが
骸!!お前のチームどうなってるんだと内心叫んだ。 Page Top Page Top