あの後、リング争奪戦の祝勝しゅくしょう会……まぁ表向きは
ランボ君の退院祝いとツナがハルと京子ちゃんに嘘をついていた
相撲すもう大会の優勝への祝いの会という名目で皆、山本のお店に集まっていた。

表からは見たことあったけど、回らないお寿司屋なんて初めてだ。
しかも今日はツナたち……皆が勢ぞろいしている。

山本のお父さんが作ってくれた寿司や豪華な刺身に舌鼓したづつみをうちながら
私たちはそれぞれ勝ち取った平和を噛み締めていた。

誰一人欠けることなく、笑って過ごせる日常がきた。
以前は当たり前すぎて気付かなかったけれど、今はこんなにも尊いものだと実感させられる。

しかし少年達の首からかけられたリングが揺れる度に
スクアーロが告げた、これからはマフィア側の人間だという現実を思い知らされる。

皆が楽しそうにしている輪をオレンジジュースを片手にぼんやりと見つめていると
ふと雲雀さんやクロームちゃんが見えないことに気付いた。

あの二人もしっかり休めていればいいんだけど……。

「リボーン君、私はこれからどうすればいいの?」

景品として今回は特殊な立ち位置にいたので、この試合に勝ったあとも
自分の身の振り方に悩んでいたので相談すれば
少し赤ん坊は悩んだ後に、決心したように唇を開いた。

「表向きはボンゴレに所属ってことになるだろうな。
もちろん、所属と言っても最初に約束したように
無理に戦闘をさせたり、危ない目に合わせたりすることはねぇゾ。

ただ無所属だと、今回のようにまた争いの火種になるかも知れねぇ。
今回のリング争奪戦の結果とともにの所属も……少なくとも
ボンゴレ側には発表せざるおえないな」

所属……つまり今後は私の身元はボンゴレ側に保証してもらうということになる。
もちろん、その代償として私もボンゴレ側に所属することにより
ボンゴレに、世界の守護者としての利益を与えなければいけないということでもある、

「あの……今回ザンザスの花嫁がどうのこうのって話があったじゃないですか。
アレは結局どうなったんですか?」

「そうだ……それも説明しなきゃな」

皆に聞かれてはまずいのか、店の個室に案内され
赤ん坊と向かいあうように畳に座り込む。

「俺も今時恋愛は自由にすりゃいいと反対したんだが……
先代ボスの明確な意思であり遺言だからな。
そして、この神話を信じる奴も多いんだ」

「えっと……確か、世界の守護者を娶れば
大成できるとかでしたっけ?」

前にスクアーロが叫んでいた言葉を思い出した。
石垣のうえでイキり散らかしていた彼も数日後には
全身包帯で車椅子だからね。

「そうだ。そして…それはボンゴレだけでなく
どのマフィアでも大成する条件ともなっているんだ」

何そのガバガバなチート設定。眉を下げ、掌を見つめる。

「世界の守護者って……あまり実感わかないんですけど
そんなに偉いもんなんですか?」

先代ボスの方が世界の守護者にすごい思い入れがあるだけなんじゃと思ったけれど
リボーンは私の不安を読んだのか静かに首をふる。

「これはボンゴレだけに残っている貴重な記録で
まだハッキリしたわけではないんだが……」

リボーンは私に説明する義務を果たすために
特別に許可をもらい、本来は見ることすら出来ない記録を見せてもらったらしい。

まず初代の守護者が公表されたのが初代ボンゴレの時期であること。
その守護者は中国人で小柄、年齢どころか性別すら謎に包まれており
世界の守護者の力が発動した後は、ボンゴレに籍をおいて
多額の報酬を貰っていた記録が残っていると説明した。

「私と共通点なのもアジア系しか当てはまらない」

そもそも初代ボンゴレの時期って何年前なんだろうと
今がツナで10代目だからと考えているとリボーンがさらに続けるので
慌てて意識を戻した。

「聞いてるか?」

「はっはい!!」

「よし、世界の守護者はその時期に確認された後
なぜか今まで発見されることはなかった。
それは恐らくある…特定の一族にしか
生まれてこないからではとオレは推測する」

そもそも何故初代ボンゴレがこのような制約的な遺言を残したのか?
それはリボーンの中で長年の疑問だった。
マフィアなんだ、自分の愛人が何人いても許される世界だ。

そもそも、なぜ初代ボンゴレがこのような制約的な遺言を残したのか?
それはリボーンの中で長年の疑問だった。
マフィアなんだ、自分の愛人が何人いても許される世界だ。

しかし、これがある一定の血筋の話なら違う。
ボンゴレのいうように、強引にめとってでも
その血をボンゴレの親族に取り込むべきだ。

ボンゴレのボスは今まで血筋を重んじてきた。
ザンザスが命をかけて起こしたクーデターですら
ひっくり返すことの出来ないほど強力な血。

「つ……つまり、世界の守護者と結婚して
子供を産めばまたいずれ世界の守護者が誕生する……」

「そうだゾ。そうすれば実質半永久的に
世界の守護者の囲い込みに成功する」

「しょ…初代ボンゴレの人はそれも知ってて
そんな遺言を残したんですかね?」

「恐らくな。世界の守護者本人から聞いたのか
それとも、どこからか手に入れた情報なのかは知らねぇが。
そして、この遺言はマフィアの間でも知られていて
他のマフィアからも狙われるんだゾ」

リボーンのナチュラルな言葉に震えた。
サラッと言ってるけど、人が狙われているのに
なんでこんなに落ち着いているんだろう。

こっちは食べたもの全部吐きそうになってきたのに。

別室のツナたちの声が聞こえてきて我に返った。
落とした視線をあげ、リボーンを見つめる。

「リボーン君も、ツナのお嫁さんになればいいと思っている?」

リボーンは少し沈黙した後、静かに唇を開いた。

「それが最善だナ」

「やっぱり「だけど……」え」

耐えきれなくなって落とした視線がとまる。
言葉を切るようにはさんできたリボーンの言葉は重く刺さった。

「オレは嫌だゾ。そんなのまるで家畜みてぇだ。
オレは、男も……そして女も恋愛は自由にすりゃいいと思ってる。
それはツナもだぞ!!そして、囲い込みにはすでに成功している。
なら次いつ生まれるかわからねぇ守護者の問題よりも
オレにとっては今のの意思を尊重する!!」

「リボーン君……」

視線をあげ、うるんだ先で微笑む赤ん坊にありがとうと小さく笑った。

「それにな、何も血筋の囲い込みって話なら
ボスに限定しなくてもいいだろ?」

「ん?どういう……」

「オレ達の守護者はほぼ全員年もちけぇ男だろ?」

「あ…え…っと」

言いたいことがだんだん呑み込めてきて顔に熱が集まる。

「その気になりゃあ逆に選び放題だゾ!!」

「はっはぁ!?」

選び放題!?え、相手にだってこんなゲテモノ拒否する権利しかないんだけど
リボーンは逆にお前が選んだ相手はほぼ100パーOKするしかねぇだろと笑った。

「結婚して子供でも作りゃあその一族は
生涯に渡りボンゴレの庇護をうけるんだからナ」

誰かいいの居たら遠慮するなよとニヒルに微笑まれ
パッと浮かんだ顔を振り払うように、慌ててオレンジジュースを飲み干した。 Page Top Page Top