少し沈黙の後、スクアーロは腹をくくったのか重たい口を開いた。

「お前らの想像どおりだ。――奴は九代目に凍らされた」

皆が無言で互いに視線を送り合った。
誰もがやはりと納得し、スクアーロに続きをうながす。

8年前、イタリアにあるボンゴレ総本部を味方であるはずの
ヴァリアーが襲った事件を淡々と語り始めた。

「俺たちの計画は順調だった。後は俺とボスが九代目さえ潰すってところまではな」

九代目という言葉に誰もが反応する。
あんな優しそうな老父を殺そうとするなんて……それもよりにもよって息子のザンザスに。

しかも過去を思い出しながら淡々と語るスクアーロにも苛立ちを覚える。
人の命をなんだと思っているんだ?――その後ザンザスは氷漬けにされたから
結果的には彼らの願いは果たされなかったわけだけど……それでも

「ボンゴレを……九代目を襲ったことを………
今も後悔していないような口ぶりなのが腹立つ」

思わず口から出た言葉に自分でも驚いたが、それでも謝る気はしなかった。

「ああ、一ミリも悪いと思ったことはねぇ」

「っ!!」

スクアーロの言葉に、思わず殴りかかろうとする者
逆に可哀そうな眼で見つめる者と様々だった。

私も最初は激しい怒りがこみ上げ、ふと何故だかその後にそうか
彼らも自分たちの命をかけた計画だったと思い出した。

命をかけてまで、人を殺めてもかまわないほどの計画。
彼らの基準、価値観が悲しかった。

だって私の世界では……私の基準では、どんなに言い訳したって
簡単に命をかけたり、人を殺めることが正当化できるわけなかったから。
そして、そんな世界で生きている私の平和思想も彼らにとっては
当たり前ではないという現実。

しばらく私とスクアーロは静かに睨み合いをしていたが
すぐに彼は視線を外し、チェルベッロに詰め寄った。

「俺をここから出せ!!」

その言葉に思いっきり面食らう。シリアスな気持ちになっていたのを
返せと言いたかったけど、ヘタレなので呑み込んだ。

この人、全身包帯ぐるぐる巻きかつ歩けないから車いすで来てるのに何言ってるの!?

チェルベッロも案の定、無理だと即答する。
初めて彼女たちの言葉に共感を覚えた瞬間だった。

彼女たちいわく、規定がどうとからしい。
しかしスクアーロは納得できずに、拘束された車いすごと暴れだした。
慌てて周囲が止めに入る。

不意に高い笑い声が闇に響いた。
弾かれるように声の方を向けば、限界がきて倒れこむツナに
今にも襲い掛かろうとしているルッスーリアとレヴィの姿。

「おい、勝負はもう着いたんだ。ここから出せ!!」
シャマルの発言を、チェルベッロは非情にも否定する。
まだ試合は終わっていないと告げられ、血の気が引いた。

「やめて!!」

二人の攻撃が今まさにあたろうとした瞬間、まるでシャボン玉が弾けたかのように
一瞬にして攻撃を放った二人の姿が消えた。

「なっ……幻術?」

「あれは……霧の守護者の!!」

どうやら、ルッスーリアとレヴィはマーモンが生み出した幻術だったらしい。
その証拠に、あの場にはツナとマーモンしかいない。

「よく見破ったね…でも、もう這う力すら残っていないようだね」

可愛い声で赤子が、残酷な現実を突きつける。
ゆっくりと氷漬けにされたザンザスの前に降り立ったマーモンは
ツナに対峙するように立ちはだかった。

「クソっ!!了平達はどこ行ったんだ!?」

コロネロの言葉に、そういえばとツナ以外の面々を思い出した。
皆は大丈夫なのか……。そしてコロネロのいうようにピンチの今こそ
皆に駆け付けてほしいと何もできない歯がゆさの中で祈った。

「無駄だ。ザンザスは…眠りについた。
奴が……目覚めることは…ない」

息も絶え絶えにマーモンにツナは戦いは終わったと宣言する。
しかしマーモンから帰ってきたのは否定の言葉だった。

「これで終わり?――冗談じゃない。
むしろこれで、ボスがボンゴレの後継者となるための
儀式の準備が整ったのさ♪」

「儀式?」

ツナだけじゃない。思ってもみなかった言葉に
その場にいた全員に緊張が走る。

雨ごいとか祈りに近い、あたるか分からない儀式とは違う。

「ボスは再び復活する」

赤子は儀式がただの祈りではなく、確実に成功すると分かっているような口ぶりだった。
だからこそ誰もヤジを飛ばしたり、声を荒げる者も、儀式を否定する者もいなかった。

全員の脳裏には、ただただこの儀式を絶対にマーモンに
実行させてはいけないという危機感だけだった。

なんだか悪い予感がする。マーモンが胸の前で構えた両こぶしから
まばゆい光が走った。それはとても柔らかい光……なのに
マーモンからは禍々しい殺気のようなものを感じる。

「あの光は…」

すぐに疑問は解けた。マーモンが構えていた拳を広げ
そこから完成した守護者のリングを6個出してきたからだ。

「ボンゴレリングで……ボスはもう一度復活する」

6個集めたボンゴレリングにも驚いたが、それよりも
そのリングを使って復活させるという言葉に誰もが言葉を失った。 Page Top Page Top