「零地点突破・改!!」

「構えが…変わった」
「一体何をする気だコラ!!」

「まだ零地点突破とぬかしやがるか」

ザンザスはまだ本物じゃないと言い張っている。
それにしても、なんで初代の技を彼が知っているんだろう?
リボーンはそれに気づいているのかいないのか
そのことについては何も触れてこないから言い出せない。

「このカスが!!何度ハッタリをかませば気が済む?
本物の零地点突破にそんな構えはねぇ!!」

「またあいつ…零地点突破は初代しか使えなかった技!!
根拠もないくせに!!」

バジルの言葉で、やはりどう考えてもザンザスが
あの技を見切っていることがおかしいと確信する。
ボンゴレ初代なんてツナたちが今十代目を争っているなら
何百年前に生きてた人だよって話になるからね。

仮にマフィアの世界で寿命が短く、ボスの座について10〜20年くらいしか
生きられない、あるいは世代交代したと予想しても
初代までたどれば100年は超えるのは必須。

だからこそ、目の前のどう見ても二十代後半くらいにしか
見えないザンザスがまるで見たことがあるような口ぶりはおかしかった。

しかしリボーンはまさかなと意味深な呟きをして黙ってしまった。
それには隣のコロネロと近くの私しか気づかなかったが
バジルのザンザスの発言こそがハッタリだという言葉を信じることにした。

「お前が何と言おうが……オレは…
オレの零地点突破を貫くだけだ!!」

「まったく小賢しいカスが。
二度とその技の名を言えないようにかっ消してやる」

ザンザスの長い足から繰り出される蹴りがツナに決まった。
ツナは防御もできずにそのまま吹き飛ばされる。

「消え失せろ!!」

吹き飛ばされていくツナにあわせるよう、に畳かけて弾丸を放つザンザス。

「ああ!!沢田殿!!」
「やべぇぞコラ!!」

額から出ていた死ぬ気の炎がやみ、誰もが黙り込んだ。
しかし次の瞬間、また淡い光を出しながらともったのを確認し[#ruby=安堵_あんど#]する。
肩で息をしながらも、ゆっくりとツナは立ち上がった。

しかしあのボロボロの様子だとうまくザンザスの炎を
吸収しきれているのかどうかも怪しかった。
案の定、弱きっているツナに対して待ってくれるようなザンザスではない。

すぐに炎の噴出で飛び上がると、ツナに二つの銃口を向けた。

炎の蕾ボッチョーロ・ディ・フィアンマ!!」

先ほどの確か怒りの暴発スコッピオ・ディーラとは違う攻撃。
空中でツナの周りを旋回しながら、憤怒の弾丸を次々と浴びせていく。

「どうした!?もう飛ぶ力もねぇか!!」

爆発と、ザンザスの高笑い、時々聞こえるツナの叫び。
地獄だ……祈るように握った手は震えて身体は恐怖で硬直する。

「沢田殿が…」
「あいつ、なぶり殺す気だ」

「ボッチョーロ・ディ・フィアンマ……炎の蕾か。
あの攻撃はそんな生易しいもんじゃねぇぞ…コラ」

やめてと叫びたかったけれど、唇が動かない。声が出ない。
変わりにどんどん熱くなっていく目頭から涙が零れ落ちそうだった。

涙がこぼれた瞬間、ツナと目が合った。
大型モニターの画面越しにだけど……痛みに苦しいというよりも
どこか悲しそうで、けれど決意を固めた瞳だった。

「…ツナ」

ツナはまだ諦めていない。何かする気なんだ。
そんな時に泣いている場合じゃないと慌ててまぶたをこする。

「どいつもこいつもカスの分際で…俺にたて突くんじゃねぇ!!」

ツナにいら立ちの声をあげ、ザンザスはさらに攻撃を強める。

「決別の一撃……コルポ・ダッティオ!!」

「トドメを指す気だ!!」

「ツナ!!よけて!!」

今までの炎の弾丸よりさらに大きい。
確実に仕留めるための一撃を放ったザンザスに各々が悲鳴をあげる。

ツナは動かない。まさかもうよける体力も残っていない……?
今までで一番大きな爆発のあと、その地響きが足に伝うのを感じ絶望した。
見上げたモニターは爆風でツナの様子がみえない。
それどころか、あんな爆発をうけたんだ。もう骨すら残っているのかも分からない。

「いやだ……ツナ」

必死にこらえていた涙が溢れてくる。
思い出の中のツナが頭を駆け抜けていく。
まるでさっきのが最後みたいに……。

「ツナー!」

悲鳴をあげるように名前を呼んだ。
他のみんなはもう呆然と立ち尽くし、息を飲んだり
搾りだすようにそんなと呟くことしか出来なかった。

ただ目の前の光景が信じられなくて、そして信じたくもなくて
圧勝するとは思っていなかったけれど、まさか
こんな風に終わるとは誰一人予想していなかった。

「勝利はわが手に…」

ツナに背を向けたザンザス。私もそんな彼を見ていられなくて
視線を落としたその瞬間。まぶしい光がモニターから溢れるのを感じた。

「え…」

思わず視線をあげると、ツナがいた。生きて立っている。
死ぬ気の炎を両手に燃やし、ザンザスを見据えながら
まだ戦いを続けようとあがいていた。

「次は、オレの番だ…ザンザス」

「何ぃ!?――死にぞこないが!!」

ザンザスが空中に飛び回避すれば、ツナもその後に続く。
先ほどまで飛ぶ体力すら残っていなかったので驚いた。

「ザンザスのスピードに」
「追いついている!!」

蹴りがザンザスの顔を直撃した。
ザンザスが怒りにまかせてツナを攻撃しようと向かってくるが
またツナが先にザンザスを拳で撃ち落とした。

「一体どうなってるんだコラ!!」

「死ぬ気の零地点突破・改」

リボーンの言葉に弾かれるように画面に視線を戻す。
アレが、ツナの……ツナだけの零地点突破…?

「くらえ炎の鉄槌てっつい…マルテーロ・ディ・フィアンマ!!」

怒りをあらわにしながら、ツナにさっきとは違う技をザンザスが繰り出した。
とても早い憤怒の弾丸がツナを撃ち落とそうと空中に放たれる。

今まではダメだと思ったけど、今のツナなら……。
誰もがそう思ったんだろう。今度は悲鳴をあげたり息の飲む者もいなかった。
ただ皆の熱い視線だけがモニターに集まる。

ツナを信じる視線が、祈りが、願いだけがツナへと集まっていく。

弾丸の攻撃をうけ、煙があがるもすぐにオレンジの優しい炎の光がのぞいた。
ツナを包むように丸い球体状になった死ぬ気の炎が攻撃を防いだようだった。

そしてその球体はどんどんしぼんでいき、ツナに吸収されていく。
ツナの目が見開かれた瞬間、ツナの額にともっていた炎が激しく揺らめいた。

「アレは!!」

「なるほど…それで改なんだな」

「え、リボーン君どういうこと?」

補足するようにリボーンは続ける。

「ツナの奴、ザンザスの炎を吸収するだけでなく…自分の力に変えてるんだ」

リボーンからモニターのツナへと慌てて視線をうつす。

「自分の力に……?」

「こんなことがあるワケがねぇ!!」

私も信じられなかったが、相対しているザンザスの方は
もっと信じられなかったんだろう。怒りに任せ、もう一度銃口を向けている。

しかしもう一度撃たせるほどツナは隙を見せなかった。
逆に今までのお返しと言わんばかりにザンザスに重い拳を与える。

「やった!!」

誰もが歓喜の声をあげた。しかし、すぐに緊張が走る。
それは誰もがこんな簡単にザンザスがくたばるなんて思っていないから。

案の定、永遠と続く悪夢のようにザンザスは起き上がってきた。
その姿にもはや恐怖すら覚える。

「この俺が……まがい物の零地点突破ごときに!!」
ザンザスの身体から煙があがり出した。

「アレは……」

ザンザスは叫びをあげ、ツナに殺気をみなぎらせていく。
咆哮とともに広がっていく顔のアザ。

体中にのびるケロイド状のやけど跡に恐怖で息を飲んだ。 Page Top Page Top