「ツナは直撃を食らったはずだぜコラ!?」
コロネロにリボーンはニヒルな笑みを返す。

「ザンザスの…憤怒の炎を中和ちゅうわしたんだ」

「憤怒の炎を、中和?――え、そんなことができるの?」

「そうだゾ。死ぬ気の逆の状態になってナ♪」

「死ぬ気の…逆?」

え、意味が分からない。コロネロも、他の皆も分からなさそうだったので
よかった、私だけが会話についていけてないわけではないと安心した。

「マイナスの状態ともいうけどな」

「マイナス?」

ということは普段がプラスの状態ということでいいのだろうか。

「死ぬ気の零地点突破とは普段のニュートラルの状態を
零地点……死ぬ気になって、炎が出ている状態をプラスとした場合。
それとは逆の、マイナスの状態になる境地のことなんダ」

だから温度に見たてて零なんだ。
熱い状態が逆に冷めていって、今のツナの死ぬ気の炎になっている。

「マイナス?つまり何もしてない時よりもさらに死ぬ気が空っぽということか?」
シャマルの発言にええっと声をあげる。

「しっ死ぬ気の炎が切れたら死ぬんじゃないの?空っぽで大丈夫?」

「そこは大丈夫だ。空になった部分は、敵の炎を受けても
吸収して無くしちまえるんダ」

だから、あの時確かにザンザスの攻撃をくらったはずなのに
ツナはまだ立っていられたんだ。

「だが、何故不規則にまたたく炎になるんだコラ?」

「アレはプラス状態と零地点を行き来して、マイナスになるタイミングを計っているんだ」

だからあの間無防備だったのか。そして、ザンザスはそれを恐れていた。
ツナが……マイナスのタイミングになる瞬間を!!

「それは初代が使ったと言われる、零地点突破か」

「そうだ」

「こいつは傑作けっさくだ!!」

急に高笑いをしはじめたザンザスにツナだけじゃなく、全員の動きがとまった。

「誰に吹き込まれたかは知らんが、教えてやる。
零地点突破は……そんな技ではない!!」

誰もが息を飲んだ。それはツナを鍛えたリボーン達も例外ではない。
どういうことかとリボーンに問いかけようとした時
ザンザスの意味ありげな言葉が耳に飛び込んだ。

「本物とは似てもにつかねぇな」

本物?……やっぱりザンザスはこの技を知っていた?

「考えてもみろ、腐ってもボンゴレの奥義だぜ。
使い手がそれほどダメージをうける……そんなチャチな技じゃねぇだろ?」

確かにザンザスの指摘通り、ツナはもうボロボロ。
肩で息をし、立っているのがやっとのほどに。

「知ったことを!!」
「ただの負け惜しみだびょん!!」

「いや、確かに奴のいうとおりだ」
リボーンの発言に一気に空気が凍り付く。

「ツナの体は、憤怒の炎を吸収しきれず…摩耗まもうしている。
コイツを使っても、勝ち目はなさそうだ」

淡々と残酷な言葉を告げるリボーンに面食らった。
なんで、そんな簡単に勝ち目がないなんて言えるの。
ツナは……負けてしまうの?

「死ぬ気の逆とは、強制的に生命力を枯渇こかつさせる
危険な状態である上に…敵の攻撃をうけるタイミングを間違えば
直撃をくらう」

「そんな!!拙者たちはあの技を目指して修行してきたのではないんですか!?」

バジルの悲痛な叫びが刺さった。
これで負けるとなれば彼もかなりの責任を感じるだろう。

「あの技は…あの特訓のための!!」

「そうだとも言えるが、違うとも言えるな」

「え……それは一体どういう?」

「死ぬ気の零地点突破は初代が使った技という印象が強いが
正確には、技を導くための…死ぬ気とは逆にある境地のことダ」

モニターのツナを見つめながらリボーンはバジルに答える。
その漆黒の瞳は底がないように暗く、何を考えているのか分からない。
けれど、ぶれずにツナだけを見つめる瞳からは
ツナが負けると本気で思っているようなあきらめは見えなかった。

「もしツナがその境地にたっしても、編み出される技は初代と違うとも言える」

「そんな!!では失敗なんですか!?
沢田殿は…なんのためにあれほど厳しい修行を!?」

離れて立っていた少年もこのまま負けるなら
クロームをつれて帰るとわめきだした。

誰もが負けを意識しはじめ、重たい空気が流れ始めたとき
可愛い声が空気の流れを変えるように呟く。

「信じることだ」

「え……」

「オレ達のした特訓を、初代が生み出したという技の力を
そして……ツナを!!」

リボーンの視線の先、モニター越しでまだ闘志を絶やしていないツナが移る。
それを見て、誰もがハッと息を飲み己を恥じた。

自分たちは戦ってすらいないのに、早くも負けると思ってしまったことを。

「ツナの力を、信じることダ!!」

ザンザスが厳しい顔で銃口を向ける。

「終わりだカス!!灰になるまで打ち込んでやるぞ!!」

「しっかり狙えよ」

挑発するようにツナは、銃口を向けられているのに動かない。

「何ぃ!?」

不快そうにザンザスが顔をゆがめる。
よほど挑発がしゃくにさわったらしい。

「次はうまく…やってみせる!!」

各々が声をあげた。先ほどと同じように構えをとるツナに。
額と、グローブの死ぬ気の炎が等間隔とうかんかくでついては消えを繰り返す。

「フッ、ブラッドオブボンゴレ♪
ツナの超直観が何かを見つけたらしいな」

「ふんっ。何度やっても同じことだ」

構えていた片手を組みなおした。まるで対になるように構えだす。
先ほどとは、いいや今までと全然違う構え。

「零地点突破・改!!」

ザンザスだけじゃなく、モニターを見上げる私たちも息を飲んだ。 Page Top Page Top