「全守護者の招集?」

会場についた私たちはチェルベッロが強制的に
招集したという守護者たちに面食らった。

それもそのはず、なぜなら重症のルッスーリアや
目を覚ましたばかりのランボまで連れてこられたからだ。

「大空戦は六つのリングと守護者の命をかけて頂きます」

「ちょっと…何言ってんの?」

抗議するツナにチェルベッロが納得できないなら失格とすると脅した。
そうなればザンザスの不戦勝だ。さらに各自守護者が手に入れた
リングまで渡すように指示され、これにはツナだけじゃなく
死に物狂いでリングを手に入れた守護者たちも抗議の声を上げた。

しかし相変わらずチェルベッロは冷たかった。

「真の守護者であるならば…心配する必要はないでしょう?
最終的にボンゴレリングは、必ず持つべき主人のもとへいくものです」

平然とそう言い張る彼女たちにもはや唖然あぜんとし何も言えない。
全員釈然しゃくぜんとしないが、彼女たちに促されるようにリングをボックスへと収めていった。

「それでは、大空戦のルールを説明します。
大空戦もほかの守護者同様、リングを完成させることが勝利条件となります。
今回のフィールドは学校全体」

「広ぇな」

「…最後だから、こんなに広いの…?」

逆に広すぎて不安になってくる。
鬼ごっことかなら有利かもしれないけど……あ、でもツナはここの生徒だ?
なら学校内のマップは把握してるよね?
ならザンザス達よりは有利なのかも……そうであってほしい?

圧倒的な力差は否めないから、せめて地の利くらい味方にしたいと切に願った。

「広大なフィールドでの戦いを観戦できるよう、各所に小型カメラを設置し
観覧席以外にも大型ディスプレイを…そして守護者の皆様には
カメラ搭載型モニター付きリストバンドを用意しました」

「なるほど……小型テレビか」
「ハハッ♪ツナがドアップだぜ」

「では守護者の皆様はリストバンドを装着次第、以前…各種
守護者戦が行われたフィールドまで移動してください」

「ん?フィールドだと?――今更どういうことだ?」

「質問は受け付けません」

私が聞きたかった質問を投げかけてすぐ塩対応されてる。
ちょっと落ち込んでいるレヴィに同情した。

そして、守護者戦が行われたフィールドまで移動させるということに
なぜだか胸騒ぎを覚えてならない。

「あっあの…みんな?無茶しないで…どうか無事に帰ってきてね!!」

「ああ、わかってる」

「おう?」

「行ってくるぜ」

「ありがとう」

「むにゃむにゃ」

「…当たり前だよ」

皆の背中を見送りながらギュッと拳を握り
もう一度、今度は神様にどうか無事でいさせてくれと頼んだ。

「心配すんなって♪」

不意に肩におかれた手にビックリして振り返れば
キラッと歯を見せて笑うシャマル……そして鷹を従えて飛ぶコロネロ。

いつのまに?そして相変わらず赤ん坊が鷹で飛んでる姿ほんとアニメ感すごい。

「守護者全員、各フィールドに到着したようです」

チェルベッロの声で我に返る。
よかった。フィールドに着くまではとりあえず無事みたい。

「各フィールドに設けられたホールの頂上部分には
フィールドと同じリングがそれぞれ置いてあります」

やっぱり、何かさせる気なんだ?
ツナだけじゃなく、守護者たちも巻き込んだ大乱闘。
あのリングに、次期ボンゴレボスの座に
私たち未来のある若者が命をかける価値なんてあるんだろうか。

悔しくて悲しくて、理不尽で怒りもわくし
一番腹が立つのは何もできない自分にたいして。

「ただいま、守護者全員にリストバンドに内蔵されていた毒が注入されました」

守護者たちが一斉に悲鳴や叫び声をあげるから何事かと思えば
大したことでもないようなチェルベッロの回答に面食らう。

「そっ…それっ……なんで今いうんですか?
それに、どうしてこんなこと?」

勢いあまって詰め寄れば、アナタには関係ありませんとつっぱねられた。

「デスヒーターと呼ばれるこの毒は瞬時に神経を麻痺させ
立つことすら困難にさせます」

そっそんな……ならどうやってホールの、しかも頂上にあるリングを奪うっていうの?

「そして全身を貫く燃えるような痛みはじょじょに増していき
30分で……絶命します」

ぜつめ……い。

頭が真っ白になった。まるで急に冷や水を浴びせられてビックリしたみたいに。
しかし時間はとまらない。だんだんと焦りで体が熱くなってくる。
固まった脳内がパニックでめちゃくちゃにかき回され、落ち着いていられなかった。

「とっとめて?おねがいします?とめてください?
なんでっなんで…みんな…いやっ死んじゃだめ」

髪を振り乱しチェルベッロにつめよるも、パニックで力の入らない体を
まるで邪魔だと言わんばかりに押され、よろけて倒れてしまった。

悔しくて、つらくて、こんな現実に絶望して地面に伏せたまま泣き崩れる少女。
嗚咽おえつとともにみんなが死んじゃう、とめてと繰り返し続ける。

「おいっ…しっかりしろ?」

「ひっひー…しゃ…シャマル…さん」

「ゆっくり息を吸うんだ?」

パニックから過呼吸を起こす少女を男は抱きかかえると
痛まし気な顔で少女の汗で張り付く前髪を撫でた。

「大丈夫だ。万が一の時には医者のオレがいる」

「そっ…そうだ、よかっ……」

!?シャマル…は大丈夫なの?」

「…ああ、ずっと気を張っていたんだろう。パニックから過呼吸になったが
今はショックで気を失ってるだけだ…心配ない」




………
……

強烈な爆発音で目が覚めた。

「ん……あれ」

気づいたコロネロが気絶してたぜと声をかける。
慌てて見渡せばなぜかずっとシャマルに抱きかかえられていたので
ビックリして悲鳴をあげた。

「すっすみません?重かったですよね?」

「いや、羽のように軽かったぜ♪
気が付いてよかった」

もうちょっと抱きしめとくかと囁かれたが
真っ赤な顔で辞退して飛びのいた。

また爆発音が響く。何事かと視線を移せば屋上。
さっきまで倒れていた獄寺が立っていた。


「えっ嘘……なんで」

「雲雀の協力で解毒できたんだ」

その雲雀さんはどうやって解毒したんだと突っ込みたくなったが
あいつはスーパーサイヤ人と並ぶスーパー雲雀人だ。
ちゃっちゃと自分の解毒はすませても違和感ない。

「だって、縛られるの嫌いだから」

思わず口から飛び出していた雲雀マンセーにハッと我に返り赤くなる。
誰も聞いてなかったかな?我ながら恥ずかしい独り言だ。

あっ……そういえばツナは?そして他の守護者は?
慌ててモニターに視線を移せば、現在解毒がすんでいる
ベルフェゴール、レヴィ、獄寺、雲雀と
そしてツナはザンザスと戦っている。

レヴィを倒した獄寺は彼からリングを奪い
意識のないランボのリストバンドにもつけていた。

よかった。これでランボ君も解毒される。

まばゆい炎が二つ、空中に舞う。
それは近づいて離れて、それを何度も繰り返した。

近づくたびに夜空一体に緊張とそして衝撃波が走る。

とても綺麗で、とても残酷な炎のきらめき。
魅せるためじゃなく、どちらかを倒すために繰り広げられる炎の円舞。
今まさに命をかけた戦いが繰り広げられていた。 Page Top Page Top