お互い不敵な笑みで数秒間静止した後
玉座ぎょくざからザンザスが飛び上がり、雲雀の繰り出すトンファーに足をのせた。

しかし決定打を与えぬまま、背中から宙をひるがえし
トンファーを構えたままの雲雀から彼は距離をとった。

誰もが今後の予測できない展開に冷や汗をかいていると
ザンザスが一言、挑発的に足が滑ったと雲雀に笑った。

「だろうね」

雲雀も冷たく返す。
私達はそのやりとりの意図がつかめず困惑していると
ザンザスの踏んだ地面からピーという警告音がなり
すぐに爆発した。そうだ。地雷が埋まっていたんだった!!
ザンザスはそれも予測していたように軽くよける。

そしてゴーラモスカの回収をしにきたとだけ雲雀に告げた。
その後、すぐに負けを認めるザンザス。だが、言葉とは裏腹に
表情は余裕そのもの……というより、どこか楽しんでいるような嬉しさすら滲んでいた。

「ふうん…そういう顔には見えないよ!!」

叫んだと同時に挑発的なザンザスに向かって雲雀は駆け出す。
両腕に構えたトンファーが右、左と交互にザンザスの顔面めがけて撃ち込まれるが
彼は余裕そうに後ろ足でステップを踏みながら避けていく。

「雲雀のやつ…何しとる!?機械仕掛けに勝ったというのに!!」

了平の言葉に激しくうなずきながら、もういいですよと叫んでみたものの
案の定、バーサーカー雲雀には届くはずもなくて……。

いや、分かってたけどガン無視はひどくないかな?
あと、あいつが投げたリング後でチェルベッロの人から回収しておこうと誓う。

雲雀とザンザスは地雷原の中で攻撃を続けている。
と言っても繰り出すのは雲雀のほうだが、それを余裕そうに全てかわすザンザスは
汗もかいていない。二人は体中に目がついているのかと思うくらい
地雷だけでなく、機関銃の噴射すらもかわしつつお互いを攻撃しあっている。

「いつまでそうしているつもり?」

「安心しろ…手は出さねぇ」

「…好きにしなよ。どの道、君は噛み殺される」

一瞬、トンファーがザンザスに決まった。
しかし彼も瞬時に手に死ぬ気の炎をともして受け止める。

「手…出さないんじゃないの?」

焦ったザンザスの顔と雲雀の台詞にやったーと内心小おどりした。
当たればあの天下の雲雀さんだよ?勝つ可能性出てきたと喜ぶも
緑色の閃光が雲雀をかすめて息を飲む。

「ひっ雲雀!!」

「雲雀さん!!」

思わず叫んだ私達の頭上からも弾丸ロケットが降り注いできたので
慌てて近くに居た山本に腕をひかれ、それぞれ地面に倒れ込むようにして避けた。
それは私達だけでなく、ヴァリアー陣営にも降り注いでいる。

あ、ベルは避けたけどレヴィとか言ってたおっさんモロに食らった。
ご愁傷様です、と思ったがまぁあの身体なら即死はないだろと
仲間達に安否確認をとる。全員が何が何だか分からない様子だったが無事ではあった。

ゴォオオと言う風を切り裂く……まるでジェット機が近くを飛んでいるかのような音。
すぐに気づいた獄寺に弾かれるように、私達もその視線を追えば
なんと先ほどまで倒れていたゴーラモスカが宙を舞っていた。

「はあああ!?」

ありえないと悲鳴をあげる。
え、さっきまでボロボロでしたよね?な…なんであのスピードで飛べてんの?

「言わんこっちゃねぇ……オレは回収しようとしたが」

ザンザスの言葉にハッとする。
まさか……ずっと分かってて黙っていたの!?

「向こうの雲の守護者がはばんだ」

そんなのって……屁理屈じゃないか!!
だ……だって雲雀さんは知らなかったんだから!!

私達だってもうあの機械は壊れたと思っていたのに……
それがまだこんな空を凄いスピードで飛ぶ力があるなんて知るはずもない!!

元はといえばバーサーカー雲雀が原因かも知れないけど
でも黙ってたアンタも罪がないとは言えないだろうと
ヘタレなので口には出せなかったが、それでも悔しくて睨めば
彼と一瞬視線があったのでヒッと息を飲んで山本と獄寺の背に隠れた。

彼はそんな私をあざ笑うかのように鼻で笑った後
雲雀だけじゃなく、こちらにも忠告するように続けた。

「奴のせいでモスカの制御が利かなくなっちまった」

その表情はとんでもない事態なはずなのに嬉しそう。
ああ、そうか!!こいつは当たらない自信があるからこんな余裕なのか!!
そしてこの場で一番余裕じゃない私はいつまた弾が飛んでくるか冷や汗と動悸が止まらない。

先に心臓発作でショック死しそうだったが、目をぐるぐると動かし
どうにか脳から全ての筋肉と己の反射神経を信じて命じる。――とにかくあたるなよと。

弾幕でそれなんて無理ゲー、死亡フラグオワタwとか流れたが無視する。

そんな中、フィールドに向かって走って行く少女が見えた。

「おい!!フィールド内は危険だぞ!!」

「くっクロームさん!?も…戻って!!」

ピーという嫌な音とともに、立ち止まるクローム。
その瞬間あがる爆発音に、呼吸すら忘れて目を見開いた。

事情が飲み込め、思わず悲鳴をあげた時に爆発と同時にあがった煙も晴れた。
地にふした少女にヒヤッとするも、その左右に同じようにふした少年の姿を見て
やっと息をつけた。よかった……爆発に巻き込まれたかと思った!!

「けん…千種」

「手間がかかる女だびょん」

機関銃の先がフィールド内に侵入した3人の少年少女に向く。
そして、向こうからは重い身体を揺らして近づいてくるモスカの巨体。

「はっ…挟まれた!?」

「やっ…やめてぇー!!」

思わず見ていられなくて目をつぶると、閉じた瞼の裏からでも分かる温かい光が包む。
えっ?と両目をひらけば、モスカの光線と機関銃の銃弾を防ぐように
少年少女の前で展開されているまるで太陽のような温かい炎。 Page Top Page Top