「四方は有刺鉄線で囲まれ、八門の自動砲台が
30メートル以内の動く物体に反応し攻撃します」

ためしにチェルベッロの一人が丸めた紙くずをフィールドに投げ入れると
30メートルの範囲に引っかかったのか、ガトリングの凄まじい銃弾をうけて
地面に落ちるころにはボロボロで原型すらとどめていなかった。

悪趣味なデモンストレーションに思わず血の毛がひく。
ヒッと息をのみ、倒れそうになったが気合いだけで踏ん張った。
命をかけないくせに、こんなところで倒れちゃダメだ。

これからもっと雲雀さんは苦しい思いをするかも知れないんだから。
私には見守ることしか出来ないけど、それだけでも全うしたかった。

「また地中には重量感知式のトラップが無数に設置され
警報音の直後、爆発します」

「っそんな!!」
「まるで戦場ではないか!!」

なんでこんなに危ない会場にしたんだと思わず抗議しそうになった時
敵陣から逃げたければ逃げろと冷たい言葉が返ってきた。

「テメェらのボスのようにな」

獄寺だけじゃなく、その場にいた全員が怒りに震える。
獄寺が声を荒げるまえに、気がついたら腹の底から叫んでいた。

「Shut up!(だまれ)――ッツナがにげるわけない!!
なにも知らないくせにっ!!勝手なことを言うな!!」

言い終わった後にしまったと青ざめたが
相手も今までビビり散らかしていた小娘の大声に
鬼気迫るものを感じたのか、それとも相手にする気すら起きなかったのか
私の叫びを無視して行ってしまった。

獄寺にやったなと褒められる。
温厚な山本ですら、よく言ったなと困った顔で笑っていた。
それに、と私の言葉につけくわえるように続ける。

「ツナはくる必要ねぇのさ♪雲雀はうちのエースだからな」

エースという言葉にザンザスは反応した後、大声で笑った。
あからさまにバカにするような笑いだったが、あそこまで笑われると
なんだか逆に潔い気もしないでもない。

いつの間にか骸の仲間の2人の少年と、あ……クロームもきた。
クロームのケガが心配になって近づく。目があうと少しだけ目を細めて笑ってくれた。

「ケガはもう大丈夫ですか?」

「うん。ありがとう…えっと」

「あ、骸から聞いてないか。えっとちゃんと自己紹介するのは初めてだよね?
です。桜花中2年でえっと、よく分かってないけど世界の守護者らしい」


彼女は初めて外の世界を見る赤ん坊のように大きな瞳を丸くして
私のことを興味深そうに黙ってじいっと見つめていた。

「私はクローム髑髏…えっと、あ…こっちはケン千種ちくさ

私を真似たのか似たような自己紹介をする美少女に照れつつも
急に横にいた少年2人も紹介されて身構えた。
明らかに目つきが悪いし、一人は無表情だし……。

「ああ~!!お前がだびょん!?」

ケンと紹介された少年が急に大声でつっかかってきたので息をのむ。
千種が怖がってるよと少年をとめているものの
少年はなおも前のめりで少女に目を輝かせながらつめよる。

「骸様が言ってた女だびょん!!」

「えっ…えっと」

何て言ってたのかもの凄く気になるけど
この剣幕がすごすぎて聞けない。

ケンが興奮しすぎて説明できないだろうと踏んで
となりの少年が付け足すように補足した。

「骸様から…守るように言われた」

気だるそうに言われたが、内容が内容なだけに思わず叫びそうになった。
まって、初対面に誘拐しようとしたよね?
なんでここにきて方向転換!?え……逆に怖いんだけど!?

「こっちにくるびょん!!」

腕を捕まれてぐいぐい引っ張られたが
クロームが痛がってるよと釘をさしてくれた。

「ああ?お前の役目はおわったびょん!!
もう来なくていいびょん!!」

冷たい。なっ……仲間なんだよね?
可哀想だなとチラッとクロームを見るも
相変わらず彼女は無表情で隣にこしかけた。

「私も見届けたいから」

そんなクロームに離れて座れとまたケンは暴れた。
千種はめんどくさそうにしているが私に
とりあえず隣に座る?と聞いてきた。

獄寺達はやめとけみたいな顔していたが
せっかく女子がいるし、クロームちゃん可哀想だったんで
とりあえず、クロームの横とケンや千種たちの中間に座ることにした。

「それでは始めます。雲のリング
ゴーラモスカVS雲雀恭弥……バトル開始!!」

チェルベッロの宣言がおわると、すぐにモスカは動き出した。
背中からジェットエンジンのようなものを噴射させながら
雲雀に向かって飛んでいく。

「飛んだ!?」
「そんなのありかよ!!」

敵の情報が全く分からなかったこちらは
まさかの飛行移動に驚いた。ロボットぽい見た目だとは思ってたけど
あの重量で飛んでるんだよ……恐怖なんだけど。

指先からは以前も見たように弾丸が飛ぶ。
雲雀はすばやく左によけて交わしたあと、まっすぐ向かってくるモスカに
そのまま勢いをつけて、トンファーを頭と胴体にめり込ませた。

機械の電気系統から火花が散るような音がした後
すぐモスカは爆音をあげて爆発する。

一瞬で決まった試合に、敵も味方も誰もが息をのんだ。
チェルベッロですら信じられない様子で雲雀を見つめている。

しかも当の本人はまるで勝って当然とでも言うように平然として
いらないと雲のリングまでチェルベッロに投げつける。

「さぁ…降りておいでよ。そこの座ってる君。
猿山のボス猿を咬み殺さないと帰れないや」

衝撃の発言に凍り付いたのは言うまでも無い。 Page Top Page Top