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「なあに……その話に首をつっこむ気はありませんよ♪
僕は良い人間ではありませんからね」

ゆっくりとツナに向き直る少年。

「ただ一つ、君より小さく…弱い後継者候補を
――あまりもてあそばない方がいい」

恐らくツナのことを言っているんだろうけど。
ああ、見てみなって!!どんどんザンザスの顔が怖い感じになってるから!!
そういう忠告とか……怒りゲージをあげるだけだから!!

言いたいことは分かる……私も例外ではなく弱者側だし
強者にもて遊ばれる苦労は身に染みてるから……でも、それ本人を目の前にして言う!?
愚痴りたいなら後でゆっくり聞いてあげるから!!

しかし言えない。骸も怖いし何考えてるか分からないし。
骸の仲間二人は歓喜の声をあげ、さっそく獄寺は警戒して唸りだした。
山本とツナがなだめる。骸はそれくらい警戒した方がいいと笑っていた。

「僕が霧の守護者になったのは…君の身体を乗っ取るのに都合がいいと思ったからですよ。
それに……貴女も手に入れたいですからね」

ツナと入れ替わりに視線をうつされて、狼狽えていると
パチッと骸はウィンクしてきた。まるで予約済みとでも言わんばかりに。

「さて、貴女ともお話していたいですが…少々疲れたようだ」

ゆっくりと倒れ込んだ骸に慌てて駆け寄ると、少女の姿へと変わった。
地面に着く前に慌ててその華奢きゃしゃな身体を受け止める。
顔を見ると、先ほどの青白い顔とは違って血の毛も戻り寝息をたてていた。

リボーンいわく、内蔵も骸の幻術で元通りになっているらしい。
ホッとしたのもつかの間、少年二人はどこかに去って行った。
ツナが放置されたクロームをどうするんだと叫んだが
起きたら歩けるだろとか、骸じゃないしチヤホヤする気ないとか冷たい返しだった。

「そっそんな……」

抱き留めたクロームを見つめる。
この子も可哀想だな。――そして骸だって。
この子を見ていると、つい彼を思い出さずには居られなくて
頭に流れてきた……あの暗くて冷たい閉鎖的な空間に
閉じ込められた少年を思うと胸が痛んだ。

ツナも同じだったのか、俯いていると
どちらに釘をさしたのかは分からないが、同情するなとリボーンは忠告した。
骸がしたことを忘れるなとリボーンは続ける。

「うん」

「そう…だね」

雲雀さんも、ツナ達も傷ついた。
そして私だって誘拐されて拉致されかけた。
それだけで憎むべきなのに……どうして?

胸がこんなに苦しいのは……なぜだろう。

チェルベッロは次の試合を宣言した。
雲の守護者。――雲雀さんの試合だ。

「おい、ザンザス…どうすんだ?」

リボーンがザンザスに問いかける。

「次に雲雀が勝てば、リングの数は4対3となり…
お前が大空のリングを手に入れているとは言え
ツナ達の勝利は決定するゾ」

リボーンの声に弾かれたように、各々言葉をもらす。
そういえばそうだった。試合の勝敗に気を取られていたけれど
結局はリングの合計数で全体の勝敗を決めるんだった。

「そん時は…約束どおり負けを認め……
後継者としての、全ての権利を放棄するんだろうな?」

リボーンは確認するように、鋭い言葉をぶつける。
確かに、リボーンの言うようにそこら辺をあやふやにされたら
命がけで試合した意味がない。

「あたりめぇだ。――ボンゴレの精神を尊重し、決闘を守る。
雲の対決でモスカが負けるようなことがあれば…全てをテメェらにくれてやる」

よかった。皆も少しホッとした顔をしていた。
だってあの天下の雲雀様が仲間なんだから!!

ただコロネロとリボーンだけは浮かれている私達に苦言をこぼした。
ザンザスがあそこまで宣言するのは、モスカが勝つ自信があるかららしい。
確かに言われてみると、あの鬼やばそうなザンザスが
勝利を確信し、任せられるほどのモスカって機械男もヤバいんじゃ。

頭の中で雲雀のヤバさと天秤にかけて比べながらアタフタしていると
まぁそんなに心配すんなと心配を煽るだけあおっておきながら
リボーンはニヒルに笑った。安心させたいのか怖がらせたいのかどっちだよ!!

その後、皆でランボの病室までいって勝利の報告をしながら
病院解散で各自自宅に戻った。 Page Top Page Top