スクアーロが腕を振る度に綺麗な太刀筋が舞い
そこから刀に仕込まれた爆薬も飛び出して山本に襲いかかる。

爆発であがった水柱だけでなく、爆薬と同様に
切り刻まれた柱の破片まで山本に飛び散る。

なんとか必死にくらいつこうと山本ももがいているが
どうやら途中から様子がおかしい。肩の傷を考慮しても
動きにもたつきが見られ始めた。

まるで自分の身体が思い通りに動かないとばかりに
立ち尽くす山本に皆が声をあげる。

「なぜ山本殿は動かない!?」

スクアーロの攻撃を何とか回避した山本だが
このまま動かなければやられてしまうと
誰もが口には出さないが、緊張が走る。

画面の先の山本も自分でも分からないといった様子で慌てていた。

体力面か……それとも今になって緊張や恐怖で固まったのかと思いきや
日頃から野球部で鍛えているから並の男子より体力はあるだろうし
言動から見ても恐怖や緊張しているようではなさそう。

そういえば、ハッと思い出したのは先ほどの攻防戦。
スクアーロの剣を刃で受け止めたあたりからおかしい……!?

「さっきスクアーロが放ったのは、鮫衝撃アタッコ・ディ・スクアーロ
渾身の一振りを強力な振動波にかえ、相手の神経をマヒさせる衝撃剣」

黒いフードをかぶった赤子の言葉に一同驚く。

「でも、自分の腕を強く打って硬直をとくとは…奴もやるじゃん♪」

「しかし、鮫衝撃の衝撃は素手をバットで殴られるよりつよいんだ。
――しばらくあの左腕は使い物にならないだろうね」

素手をバットでなぐられるよりって……もはやそれ振動だけじゃなく
骨とか筋肉とか破壊されるんじゃないの?
え、待って……みんな思ったよりリアクション薄いけど
普通に素手をバットで強打されても骨砕けるかも知れないのに
それより強いとかもう人体の不思議を超えてるんだけど……。

皆はスクアーロの攻撃を心配していたが、私は山本の身体が
どうなっているのかと仕組みに内心驚愕していた。
この人達、あまり考えないようにしていたけど
並の漫画やアニメのキャラクターより丈夫だよね。

ああ、これが漫画とかアニメだったらよかったと嘆く。
そしたら私だって特殊なパワーに目覚めるかも知れないし
そういう作品の多くが正義は勝つから。お約束だから。

スクアーロはさらに水場から上に逃げた山本に猛烈な攻撃を放つ。

超高速の剣が山本を襲い、山本は足場にしていた
二階のコンクリートごと地面に落ちた。

「まだやるか!?得意の時雨蒼燕流しぐれそうえんりゅうで!!」

人が1人乗れるほどの瓦礫がれきを背に倒れ込んだ山本に
今度はスクアーロが二階部分に飛び上がると
見下ろしながら勝負はついたとばかりに叫ぶ。


「継承者は八つの型全てを見せてくれたぜぇ?
――最後に八の型…秋雨あきさめを放ったと同時に無惨に散ったがなぁ!!」

その言葉に反応するように、山本は立ち上がった。

「う゛ぉおい!!寝ていろ!!そのまま三枚におろしてやるぞ!!」

「そうはいかねぇよ…時雨蒼燕流は完全無欠だからな!!」

山本の言葉に、得意げでさっきまであざ笑っていたスクアーロの顔も引き締まる。
画面外でも山本に歓喜するものや、それをバカにする者、嘲笑するものと様々だ。

しかし、顔つきが変わったスクアーロと
どこか吹っ切れたかのような清々しい笑みを浮かべる山本を見ていると
なんだか凄いことが起きそうな気がして胸が高鳴った。

「時雨蒼燕流…攻式こうしき八の型・篠突しのつく雨!!」

見切ったと豪語していたスクアーロの身体が
山本の攻撃で吹き飛ばされる。

「貴様ァ!!時雨蒼燕流以外の流派がつかえんのかぁ!?」

撃たれたお腹を押さえて立ち上がる男に、少年が振り返る。

「いいや…今のも時雨蒼燕流だぜ!!」

「なに!?」

「八の型・篠突く雨は親父が作った型だ!!」

「ええ!!」
みんな驚いた顔で山本を見る。
知っていた?とツナに聞いたが、どうやらツナも知らなかったらしい。

ディーノの肩に乗っていたリボーンはなるほどなと呟いた。
「それで八代八つの型なんだ……。時雨蒼燕流にとって継承は変化なんだ」

「変化?」ツナがリボーンに問いかける。

「恐らく、山本の父とスクアーロが倒した継承者は
同じ師匠に1~7までの型を継承され……
それぞれが違う8の型を作ったんだ」

「同じ流派を名乗りながらですか?」
バジルの問いにリボーンはうなずく。

「時雨蒼燕流の継承者は先人の残した型を受け継ぎながら
新たな型を作り、そしてまた弟子に伝えていくんだ」

「で…ですが…それでは継承の度に枝分かれして
無数の型がうまれてしまうのでは?」

「逆だゾ。――むしろ、今まで途絶えなかったのが不思議なくらいだ。
一度きりというシビアな継承法…変化には進化だけでなく退化もある。
その中で最強を謳い…あえて強者から狙われるんダ」

リボーンはまた視線を山本に戻して言葉を続けた。

「まるで、自分で自分を追い込むみてぇにナ。
ゆえに時雨蒼燕流は気と才あるもの途絶えた時…
世から消えることも仕方なしとした…滅びの剣と呼ばれる」

画面の向こうでは峰打ちをされたことにスクアーロがキレている。
こちらでもいつまでも峰打ちなんて甘いこと言っていられるのかという空気が漂っていた。

山本……がんばって!!
祈るように山本に視線を送れば、竹刀をかまえて9の型と呟いた。

「9の型!?」

みんな、思い思いの声をあげる。

「山本のやつ…新たな自分の型を放つ気だゾ」

野球のようにかまえだした山本。リボーンの言うように
この一撃で決まるだろう。

時雨蒼燕流は最強無敵!!相手の空気に飲まれないように
山本の言葉を思い出しながら、奇跡が起きてと願った。

「時雨蒼燕流…攻式・九の型うつし雨!!」

水面に自分の影をうつして、そちらに敵を集中させることで隙をついた一撃が決まる。
リングは山本の手に握られていた。

やったと歓喜の声があがる。
しかし喜びはつかの間、すぐに会場にサメが放たれたと説明される。
スクアーロは倒れたまま、山本もボロボロ。
だが、やっぱり山本はスクアーロを見捨てなかった。
傷ついた身体で抱えて、運ぼうとする。

サメがスクアーロと山本の足場を破壊した。
すぐそこまで迫っている。

悲鳴をあげそうになったその時、スクアーロが山本を吹き飛ばした。
そしてゆっくりとサメに飲まれていく。

一同唖然とするしかなかった。

ザンザスだけはサメのエサかと笑っていたが……。
敵といえ、こんな終わり方って……。

現場にいる山本はもっと辛いだろうな。
祈るように握っていたこぶしを今度は何もできない悔しさで握りしめた。

「それでは、次の対戦カードを発表します。――明晩の対戦は霧」

霧の守護者……あれ?でもだれだろう?
今知っている限りだと大空のツナと雲の雲雀さんくらい。

ツナは大丈夫なのかとリボーンに聞いていた。
どうやらツナも知らないらしい。大丈夫かなこのパーティ。
リボーンはいよいよ奴の出番だとか言ってるけど
どうか良い人でありますようにと願うしかなかった。

明日は霧の試合だ……。 Page Top Page Top