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ツナはリボーンを知っているのかと質問したが、バジルはリボーンはワケ合って戦えないとだけ返した。
そして間髪いれずにこれを持って逃げて欲しいとツナに頼んだ。案の定ツナは慌てふためく。
そりゃそうだ。まずこれが何なのかも分からないし逃げるってことはこれ持ってると追われる可能性もあるってことでしょ?
ツナが断ったのでなら私に持って逃げろ…とかこないかなと怯えていると
何かの太刀筋に瓦礫ごと私達は吹き飛ばされた。先ほどの男が剣を構えて好戦的な笑みを浮かべ立っている。

「そういうことかァ。こいつは見逃せねぇ一大事じゃねぇか」

私達はビルのガラス面をバックに男と対峙する。
男は私達を片付けた後、この箱を持ち帰ると剣先を向けながら宣言した。
そして慈悲じひなのかおどしなのか、それを渡す前にどう片付けて欲しいかと問いかけてきた。

「ひっ…!?こっここ殺す気なんですか!?」
涙目で怯える私にお前は後だ、と告げるとまずツナ達をやると宣言した。
バジルはその言葉に臆することなく、ツナにそれを渡してはいけないと叫ぶ。

「だっだけど……」

ツナもガタガタ震えて、どうすればいいか分からないと目をつぶっていた。
私も涙目でツナ…と呟きながらどうすればこの状況を脱却できるだろうか
まだ死ぬには諦めきれずに必死に模索していると、若い男性の声が聞こえてきた。

「相変わらずだなスペルビ・スクアーロ」

「ああっ」

ツナの声に弾かれるように、私も声の方を恐る恐る見やる。

そこにはまるでこの窮地きゅうちを救ってくれそうな若い金髪で凄くカッコイイ男性。
ウィズ後ろには黒服のいかつい男達がズラリ。

恐らく後ろの人達だけなら絶対敵じゃんと新たなる脅威に怯えたことだろう。
しかし金髪イケメンがかもし出す圧倒的な正義の味方感が私を妙に安心させる。
私の妄想が行き過ぎたのか『助けにきたぜ』と聞こえてきそうなほど
ピッタリのヒーローは遅れてやってくる状態だ。

その様子に少したじろいだ様子の恐らくスクアーロと呼ばれた男は
私達に向けていた殺気を颯爽さっそうと登場した金髪男性に向けて飛ばし始めた。

「子ども相手にムキになって、恥ずかしくねぇのか?」

金髪の男性の手にはムチが握られている。目の前のスクアーロとか言う男に至っては
日本の銃刀法違反じゅうとうほういはんを思いっきり無視した剣を振り回す奇行ぶりだったが、目の前のイケメンも
ムチをかかげてドヤ顔なので、私はそっと心の中でこういう大人にはならないように
清く正しく、勉強を頑張りなるべく剣や鞭を振り回さないでよい仕事につこうと決心した。

ツナはこの男性を知っているのかディーノさん!!と安心したように声をあげる。

この金髪イケメンはディーノさんと言うのか。脳内メモ帳に二重線を引いてチェックつけておこう。
隣のツナも少し安心したように表情が和らいだので、恐らくとても強い人なんだろう。

私達のヘルプを察してか、駆けつけたディーノさんは険しい顔でスクアーロに相手になるぜと布告ふこくした。
やったー!!天の助けだ!!と喜ぶツナと私。しかし、勘が良すぎる私だけ気付いてしまった。
そう、ここでドンパチやりあえば最悪こちらにも被害が及ぶんじゃね?ということに。
というか、もし私達が破壊した建物とかの請求って誰に行くの!?と深読みしないでいいことまで
いつもの癖でネガティブ被害妄想をこじらせて慌てていると
私の巻き込まれたくないという願いが届いたのか、はたまた偶然か……
ディーノの言葉に考え込んでいたスクアーロが声をあげた。
「お前をここでぶっ倒すのも悪くないが同盟ファミリーとやりあったとなると"上"がうるせぇ!!」

「今日のところは大人しく帰る…わきゃねぇぞぉお!!」

「っ――ツナ!?」

隣にいたツナの体が宙に浮く。スクアーロに頭ごと持ち上げられたツナが苦しそうに悲鳴をあげた。
私がどうにか助けられないかとパニックになっていると、間髪いれずにディーノがスクアーロにむけてムチを振るう。

鞭がぶつかる寸前に火薬が走り、爆発音とともに煙をあげた。
近くにいた私達にも熱風が飛んでくる。思わず目をつぶってどうにか頭をガードしながら耐えていると
大丈夫かとディーノに声をかけられて、煙がはれたことに気づき、ようやく震える体で頷いた。
少し遅れてやってきたのが申し訳ないのか、心配そうな顔で私の頭を撫でる青年。

切なげな琥珀こはく色の瞳にぶつかる。その瞳にうつった私が泣きそうだったので
もう一度慌てて早口で大丈夫と呟いてうつむいた。心配させたくない気持ちと恥ずかしい気持ちで頬が熱かった。
ディーノは何か考え込むように、あるいは探るかのようにも取れる心配げな表情で
少女をのぞいていたが、すぐに切り替えて近くにいた二人にも同様の質問をしていた。
ツナとバジルもディーノ同様に私を心配げに見つめていたが、ディーノから問いかけられると
間髪いれずに大丈夫と少し動揺しつつも頷いた。

内心、こんなボロボロなのに……どこが大丈夫なのか男子よとお節介ながら考えていると
上方から声量たっぷりの声が飛んできたので、思わず面食らって視線をあげた。

「今回は貴様に免じてこいつらの命は預けといてやる!!」

一斉に見上げる先には男がリングが入ったボックスを見せつけるように立っていた。
しかも何とそれをあろうことか、もらっていくと宣言している。

せっかく、ここまでバジルさんが持ってきたのに!?しかもそれ流れ的に
めちゃくちゃ重要そうな物じゃないの!?――いいの取られて!?と慌てていると
隣のバジルとディーノも悔しげな声をあげた。

「ボンゴレリングが!!」

バジルの叫びも空しく、見上げた先のスクアーロは不敵な笑みを浮かべると
余裕の表情でたいしたケガもなく去って行った。
長い銀髪の髪がひるがえるのが綺麗だ、と一瞬思うもすぐに状況のまずさに気付く。

まだ完璧には状況が飲み込めていないものの……頭の中で警報がガンガンなっていた。
私は聞き逃していない。――命を預けておくとか言ってたよねあの人!?
え……ってことは余命宣告的な意味合いがあるのでは……?

瞳が濁り、死んだ魚のような色に変わる。表情は凍り付き冷や汗が止まらない。
私はボンゴレリングという事に関してはよく飲み込めていないので
そこら辺の問題よりも、いつもながら(主に雲雀さんに対してだったけど)生命の危機ということに
脅え、震え、慌てふためいた。――いつも以上に。 Page Top Page Top