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「その方に手をあげてみろ、タダじゃおかねぇぞ」

爆発の向こうではすでに臨戦態勢りんせんたいせいと言わんばかりにダイナマイトを構える獄寺と日本刀を担ぐ山本の姿に
マフィアというのは本当だったの!?と少しホッとしたようなツナとは対象的に青くなる私。

助けて貰ったのは凄く嬉しいんだけど……私の周りってやばい奴らしかいなくない?
対人運が悪いのか、それとも本当に私はこういう危ない世界から逃げられない運命なのだろうか。

逃げるタイミングをうかがいつつも、少年二人が男に向かっていこうとするのを
先ほど吹き飛ばされた少年がかなう相手ではないと倒れながら必死に制止した声で
え、と思わず逃げようとした足を止めてしまった。どっどうしよう……二人が危ない!?

私もパニックになりながらも目の前の獄寺と山本を助けようとようやく思い出したように
そうだ、こういう時は警察だ!とスマホを取り出そうとした時、男は獄寺と山本も
決して一般人の私からみれば弱くないはずなのにアッサリと倒してしまった。

「話にならねぇぞこいつらぁ!!――死んどけぇっ!!」

「やめてぇっ!!」

男が剣を振り上げたので思わずまぶたをぎゅっと閉じて頭を抱える。
しかし聞こえてきたのは、肉の切れるようなショッキングな音ではなく
金属同士がぶつかりあうような高い音だったので、ゆっくりとしゃがみこみながら目を開けた。
その先ではさきほどショーウィンドウに伏していた少年が武器を片手に男の刃を受け止めていた。

「そろそろゲロっちまう気になったかぁ?」
不敵な笑みで余裕そうに詰め寄る男に、少年は断固としてゆずらない。
その反抗的な態度に上等だと言わんばかりに激しく剣を突き立てた。
それを少年がボロボロになりながらも弾いていく。

「どっどうしよう……」

隣のツナが弱気な声を出した瞬間、何かが彼の顔めがけて飛んできた。
27と書かれた……これはミトン………?なっなんでこんな物が?

可愛らしい声がその手袋はつけとけ、と自販機の上から聞こえてきたので
ツナと一緒に見やるとなんと変な格好のリボーン君が立っていた。

「なっお前!!」

「ただの通りすがりの植木うえき人間だ♪」

「ただの植木人間が通り過ぎるかよ!?お前っこんな大変な時にどこに居たんだよ!!」

「俺にも色々事情があるんだ。女こどもを安全な場所に避難させたり
――このコスプレを押し入れから探したりな♪」

「そっそんな理由で!?というか私もその女こどもに含まれてないんですかリボーン君!?」
以前保護してくれる的なことを言っていたのはリボーン君じゃなかったのかと頭を抱えると
私達のコントのような茶番のようなやりとりを遮るように悲鳴が聞こえてきた。

「うわああっ」

弾かれるようにツナと私が振り返ると、男が少年を倒した瞬間だった。
かなりボロボロになった身体で少年が倒れ込む。ひたいからは青い炎が消えた。
先ほどまで知り合いと思われていた少年はもう男にとっては用済みとなったのか
なぜか男はツナから情報を聞き出すと言い出しこちらに殺気を飛ばしてきた。
それにツナも私もええっと本当に何も知らなさすぎて理不尽だと言わんばかりの悲鳴を上げた。

「限界か…」
呟きに気づいた私が自販機の上にいたリボーンを見やると躊躇なくツナに銃口を向けていたので悲鳴をあげた。
「りっ…リボーン君?ちょっと…えぇっ!?」

リボーンが銃を撃つと、マジシャンも驚くスピードでツナがパンツ一丁になり男の腕を掴みかかる。
先ほどの少年と同様に色味は違うが額から炎を出して、いつもの弱気なツナじゃない
人が変わったかのような表情で男にお前を倒すと啖呵たんかを切るツナ。

まっまってまって!?なんでツナは撃たれたの?そしてなんでパンツ一丁なの!?
一連の流れに追いていけず、また思春期の異性の裸を見て良いものかと恥ずかしくて瞼を手で覆う。

男は驚いたが、すぐに考え込むような表情でツナを見つめ意味ありげな言葉を呟く。

「まさかお前…噂にきいた日本の……そうか、お前と接触するために」

え、接触……?どういうこと?
ゆっくりと目をあけると、倒れ込んだ少年の反応からもやはり少年はリボーン君が言っていた
マフィア関係の人で何らかの理由がありツナと、そして理由も分からないがまだ自称一般人と思っている私にも
わざわざ会いに日本まで来たのかも知れない。……もしかしてそれがこの男の人に知られたくなかった理由なの?

男は死んでも吐かせてやると意気込み、ツナも積極的に攻撃をしかけはじめる。
しかし男の方が格段に強いのか、何度かツナの攻撃を押し返してツナを弾き飛ばすと
先ほどまでの勢いはどこえやら、あっさりといつもの弱気なツナに戻ってしまった。

「もしかして、あの額から出ていた炎が消えたから……?」

ツナはやばいとパンツだけのまま逃げ出した。
さっそく置いて行かれる私。……え、嘘でしょ?このまま自力でなんとかしろと……?

「腰抜けがっ!!」

剣から何か弾丸のようなものが飛び出したかと思えば真っ先にツナに向かっていった。

「危ないっよけてぇっ!!」

ツナは私の悲鳴と飛んでくる弾に気づいて悲鳴をあげたが、弾は何かに撃ち落とされ
その場で標的を失って爆発した。あたりに煙が立ちこめる。その煙は私まで包み込んだ。

「さぁ……行きましょう」

煙の中で何かに引きずられるように手を引かれたので思わずついていく。
煙がはれると瓦礫がれきで簡易的な盾を作った少年が肩で息をしていた。
この少年が先ほどの攻撃を弾いて、ツナだけでなく私もあの場から逃がしてくれたことに気づく。

「あっありがとう」
「助かりました」

へなへなとツナと一緒にその場にへたり込みながら礼を述べる私に少年は
自分の名はバジルと言い、親方様に頼まれてツナに届け物で来たと述べた。

「オレに?つーか親方様って?」

ボロボロになり体力もかなり消耗しょうもうしているのか肩で息を切りながらもバジルは
何かを懐から取り出してツナに大事そうに手渡した。

「これです」

「何…これ」

「え、何かの指輪?」

ていねいに箱に包まれていたのはレプリカなのか本物なのかよく分からない指輪のような物だった。
まさかこんなものを渡しに日本までわざわざ……郵送でいいじゃんと野暮やぼな考えがよぎったが
何かはリボーンが知っているとバジルは補足したので少なくとも手渡しでしか渡せないような
理由は分からないが、とにかく重要な物に違いないという考えに至った。 Page Top Page Top