空から降ってきた少年!?1
その時だった。何かがぶつかるような衝撃音が近くのビルの上階から響いた。
「何あれ!?」
思わず反射的に見上げると、モクモクと近くのビルから煙のようなものがあがって
一瞬テロかと誰もが悲鳴をあげた。そこから何かが落ちてきたかと思えば
もの凄い早さで近くのツナにぶつかったので悲鳴をあげる。
凄い音を立ててザザーッと地面を滑っていくツナ。
「だっ大丈夫ツナさん!?」
血だらけでショッキングな映像を連想したり、こういう場合は救急車?あれ、消防だっけ?と
ややパニックになりながら、砂埃の中からツナを探すも意外とツナと思われる人影は軽傷のようだった。
「だっ大丈夫でござるかおぬし…」
「いっいててて、おっ俺はなんとか…みっみんなは大丈夫?」
あれ、もう一人…!?もしかして落ちてきたのはこの人だったの!?
最初はビルがテロか事故で爆発して破片やらがふってきたのかと慌てたが
ぶつかってきた正体はなんと、私達とあまり年も変わらなさそうな少年だった。
ツナよりもやや色素の薄いミルクティー色の髪に青い瞳。
流暢な日本語だが、節々に残る違和感。恐らく純日本人ではなさそうな少年だった。
少年は倒れていたツナに気づき、何か
気迫せまる表情でツナのことを知っているかのような口ぶりで慌てていた。
「あっあの、大丈夫?」
とりあえず怪我をしていないかたずねるために近づくと少年が丁寧に礼を述べた。
「あっ、はい。
拙者は…っておっおぬしもまさか…
殿では!?」
え……な、なんで私の名前を?と口に出そうとした瞬間、ビルの上から
もの凄い声量の怒号が飛んできたので声にならない悲鳴をあげて飛び退く。
「う゛お゛ぉ゛おいっっ!」
視線をビルに戻すと、
鈍色に輝く刃物のようなものを振り回す長髪の男性。
なっなんなんだこの人達!?目の前の少年といい、あの人と言い…頭おかしいって!?
「なんだぁ!?
外野がゾロゾロと…邪魔するカスはたたっ切るぞぉ!」
しかもめちゃくちゃ理不尽じゃん!?――ツナや女の子達と幼児は慌てているものの
獄寺と山本は何事かと瞬時に身構えた。
それをみて、私のヘタレの勘の鋭さが『あ、こいつもあいつももしやヤバイ奴?』と固まる。
目の前の見るからにやばい頭から青い炎を出している少年と上の男に対して交互に視線を行き来させ
脳内でピロリンと出された『逃げた方がいいし関わらない方がいい、でないと絶対後で後悔するぞ』と言う結論に従って
ゆっくりとこの場からどさくさに紛れて人混みに逃げ込もうと
画策していると
それを知ってか知らずか目の前のやばい奴1の少年に腕をつかまれうわずった悲鳴がでる。
「ここは危ない!!とりあえず拙者と一緒に逃げましょう!!」
「なっなんで!?ぶっちゃけ私はあなたとも離れたいんだけどぉ!!」
涙目で嫌だと駄々をこねるように首を振るが、少年の視線は頭上の男に注がれている。
「このままだと殿が危ないんです!!」
え、なんで……?危ないという言葉に固まっていると少年はすかさず隣にいたツナの腕もつかんで
刃物を振り回す男とは反対方向に走り出した。ツナと私も唖然と状況に飲まれてついていくのが精一杯だ。
とにかく、危ないというワードが頭で反響して、私と同様に腕を引かれたツナも
恐らく少年的に言うと危ない状況なのでは、と察した。ツナも真っ青な顔で怯えて少年に叫んだ。
「なんなの!?」
ツナに続いて私もどういう状況!?と叫ぶと少年は
間髪いれずに
「安全な場所へ!!おぬし達に伝えたいことがっ!!」
と走りながら返答した。
その時、目の前に一筋の太刀筋が走り爆発がおきる。
ビックリして三人は立ち止まると、後ろから男が追い詰めたと言わんばかりの声をあげた。
「う゛お゛ぉいっ!!もう鬼ごっこは終わりにしようや!!」
バッと振り返ればすぐ目の前にあの男が立っている。
長い銀髪の綺麗なストレートヘアに真っ黒などこかの軍服のような出で立ち。
手に持った武器の慣れた手さばき、威圧的な口調に本能がこの男は危ないと告げている。
彼も流暢な日本語だったが、顔立ちからして少年同様に純日本人ではなさそうだ。
「で…なんだぁそいつらは!?」
しかも、少年に話しかけているあたり知り合い的な感じなの!?
さりげなく少年から離れようとするも、無言でガッと逃がさないとばかりに
強く手のひらを握り直されてヒッと短く悲鳴をあげた。
「ああああっ」
ツナの悲鳴と私の悲鳴がダブる。男が剣を振り上げて私達に向かって
躊躇なく攻撃を仕掛けてきたからだ。真ん中に居た少年も瞬時に私とツナの手を離して
一瞬しか見れなかったが何か銀色に光る武器のようなものを取り出して攻撃を防ごうとする。
しかし、男の方が力が強かったのかあっという間に近くのショーウィンドウに
頭から突っ込むように吹き飛ばされてうめき声をあげた。思わずツナと私も心配して声をかける。
「きっ…君!!」
「だっ大丈夫なの!?」
「そうだお前ら……このガキとはどういう関係だぁ?」
私とツナを交互に見つめて、私は先ほどの必死すぎる否定から本当に無関係だと信じて貰えたのか
はたまた男の方から先にと言うことなのか、へたり込んだツナの方に剣先を向けて男が叫んだ。
「ゲロっちまわねぇと……お前を切るぜ?」
「そんなっえっと…あのっ」
ツナも慌てて否定する。そんなツナのピンチに無数のダイナマイトが宙を舞って剣を向けた男に飛んできた。
男は怯える様子もなく、慣れた直感のようなものだけで振り返るとすぐ飛び上がった。
ダイナマイトは標的をなくしても、かなりの威力なのか爆発音と煙をあげる。