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い……今なんと申したでござりまするかリボーン君!?いいか、脳内の録音班!!今の録音しておくんだ!!
多分、幼少期と嫌味をのぞいて今後言われるでないだろう台詞だから!!
脳内でどうにか思考をコメディーに持っていこうとするもやはり気まずさと恥ずかしさで顔は真っ赤に染まる。

少女がパニックで電話越しに全否定する中、雲雀は少しだけ怪しげに瞳を細めた。

「それくらい分かってる」

そして綺麗な指先で少女が制止する間もなく通話ボタンをした。


………
……

「まっ、待ってください~!!」

ドスドス効果音がつきそうなほど重い足取りの少女が、長いストロークで歩く雲雀を必死に追いかける。

「はっはぁ……くそー、いいな長い足は……ってそうじゃなくて!!
あああ、あの~!!――ホントに大丈夫ですからお構いなく!!」

えー、現在どこかと言うと並盛商店街でございます。
ようするに彼に半ば強制的にツラ貸せやって感じで連行されました。簡単に言うとサボりなうです。
学費を捻出ねんしゅつしてくれる親すまない、遅刻とズル休みはよくやるけどサボって飛び出すのは初だよ、信じて。
そしてこんな不良娘をお許しください、と心の中で涙ぐんだ。

相変わらず、雲雀は先ほどの意志をガン無視して購入した日用品が入った袋を抱えたまま
ズンズン進んでいく。その様子はさながら少女が名前を何度か呼ばなければ
全くの他人とすら取られるくらい無視して歩みを進めていた。

「君……うるさい」
「うっ、うるさいのは仕様なのですいません~。で、でもホントに
日用品とかそういうのは家から持ってきますから!!いや、なければむしろダッシュで買いに行きますから!!」

だから、と何度目かになる遠慮と言う名のやめてくださいサインを出していると
彼はいきなりクルッと向き合い、まるで子供に説教するかのように見下ろした。

「君、本当にうるさい。――だまらせるよ?」

小さく息をのんだ。すごいね、彼クラスになれば平民は一言で口を閉ざすね。
私は残像になるほど震えながら、首がもげる勢いで冷や汗を滝のように流し分かりましたとうなづいた。

ふぅとため息をつきながら視線を横に移すとショーウィンドウに私達が反射していた。
静かになった少女のために少しだけ雲雀は意識して速度を落とし、さきほどの他人の距離ではなく
少しだけ近い距離を保ったまま、歩みを進める。
はそれに気づくことはなかったが、少しだけ友人かそれ以上に間違われそうな距離感に照れた。

心臓がバクバクうるさい。そもそもあまり同性どころか異性と接触しないし
相手がいつも恐怖している雲雀だと思うと余計に頬が赤くなる。
チラッとショーウィンドウに写る姿を何度も確認しては、頬を染めた。

この胸の高鳴りの正体は恐怖心からだ、落ち着けと必死に言い聞かすも
チラチラ見る雲雀の端正な横顔と、そんな彼と周囲からは仲良く見えていると思うと
少しだけ優越感ゆうえつかんというか、自己顕示欲けんじよくが刺激されるような高揚感こうようかんが否めない。
でも次の瞬間には、全然つり合いの取れない[#ruby=冴_さ#]えない自分が目に入りため息をつく。

多分きっとこんな人から羨ましがられるような瞬間はおとずれないだろうな。
少し自嘲気味に肩をすくめて、前を歩く雲雀に追いつこうと向き直った時だった。
いきなり視界の隅から現れた人影に弾き飛ばされる。

「いったた……」

思い切り尻もちをついたし、その時に地面についた手も砂利じゃりで少しこすってしまい血がにじむ。
けれど、心優しい少女はすぐ切り替えながら自身の痛みよりもぶつかった相手を気遣った。

「あっあの……すみませっ」

見上げた先には、かなりの強面こわもての男性が二人立っていて息をのんだ。
や、やばい……どうしよう、でも相手もこんなワガママボディーと衝突して
もしかすると怪我したかも知れないしと、ヘタレだが勇気を振りしぼって、震える声で声をかけた。

「だ…大丈夫ですか?」

「おいコラァ!!ワレ、誰にぶつかっとんじゃ!!」

いきなり巻き舌の大声でまくし立てられ、息をのんで縮こまる。
私以上に恰幅かっぷくがよく、派手な柄のアロハシャツっぽい服をまとった強面かつ
成金趣味っぽい指輪ジャラジャラの男性がまくし立てた青年を制止した。

「まぁ、その辺にしときや。――けどお嬢ちゃん。
ちょっとおじさんうでが痛むわぁ~」

「なっなんだと!!おい、ワレ責任取れんのか!?」

「せ、責任!?」

慌てふためいて視線を泳がせる少女を、値踏みするように中年男性は眺めた。
ふと少女も先ほどから妙な視線に気づき、男を見上げて少し困惑して眉を下げた。
なめ回すような粘っこい視線にうろたえながら、少女は口角こうかくを引きつらせながらも立ち上がって頭を下げた。

「こちらの不注意で……申し訳…ないです」

そうは言ったものの、だんだんとそういえば彼らがまるでわざとぶつかってきたかのような動きを思い出した。
こんな広い道で、なぜわざわざこちら側から通ったんだろう?

そう考えていると有無を言わさずに中年男性に肩に腕を回された。
え、待って…怪我したはずの腕じゃね?今そこさすってなかった?と思ったのもつかの間
ぐいっと方向転換させられると近くの路地の方に誘導していく。

開いた口が塞がらない。どうしようどうしようと必死にプチパニックの中で思考を巡らせる。
何とか逃げようと雲雀さんの方を振り返ろうとするも真後ろにもう一人がピタッとくっつき、視界を遮られた。

「あっあの……私…」

サーッと青ざめ、涙目になる少女に男性がにやついた顔を近づけてささやく。

「お嬢ちゃんも怪我したかも知れないからなぁ。あっちでちゃんと確認しようや」

あ、優しい……ってなわけあるか!どう考えてもセクハラまがいな臭いがすごいんだけど。
どうにか抵抗して足で踏ん張ってその場から動かないように粘るも
男の力に勝てずに、ズズズッと半ば強制的に引きずられながら進んでいく。

「あっあの…ホントに辞めて下さい!!さ、叫びますよ?」

涙目でにらみつけると、一瞬男達がひるんだ。
しかし次の瞬間には、先ほどのニヤケ顔がいっぺんしてイラついたような表情に変わる。

「チッ……。大人しそうな顔して言うやないか。
こっちの方が被害者やぞ?ちょっとくらい付き合えよクソガキ」

流石に横暴おうぼうすぎる発言に、珍しく少女も眉を寄せてキッと涙目で睨む。

「クソガキじゃないです。――後、おじさん多分怪我なんかしてないですよね?
私は大丈夫ですから、放っておいて下さい」

肩に回していた腕を乱暴に払いのけると、逆上したのか
青筋を浮かべた男が腕を振り下ろしてきた。
あ、やばいと思った瞬間。その腕を誰かがつかむ。

「ワオ、君にしてはよく言ったね」

「雲雀さん!!」

さりげなく少年が少女を自分の後ろに来るように掴んで誘導し
男の腕を掴んだまま、ブリザード並に冷たい言葉を飛ばす。

「いい年して情けないね。――僕はこういう奴を見ると容赦ようしゃなく咬み殺したくなるよ」

腕を捕まれた男が痛みにうめいている。取り巻きの一人も何やら叫んでいるが
男同様に恐怖で青ざめガタガタ震えながら先ほどの威勢いせいの良さはどこへやらという感じだった。 Page Top Page Top