ドキドキ☆地獄への片道切符!?1
「き……聞いてたんですね!?――っていうか、なぜここに居るんですか?」
だって、ここ並中じゃない……(しかもめちゃくちゃ堂々と並中制服着てるよ)
ここの中学そこそこ金持ち多いしセキュリティ強めだと思うんだけど……。
いつかの少年のどこでも出入り自由という言葉がよぎってうなだれた。
「僕はどこでも行きたいところに行くよ。……それよりも…」
「へっ」
いつの間にジリジリと間合いをつめられていたのか、それとも彼の一歩の歩幅の方が私の後退より長かったのかは分からないが
気が付くと、ほとんど息が当たりそうな近さでじっとのぞき込まれていた。
少年は少しかがんで近くの机に手をつき、少女の考えを見すかすような不敵な笑みを浮かべて見下ろす。
「君……今日はまだ逃げないんだね」
フッと瞳を細めて
妖艶ともとれる笑みをこぼす少年にパクパクと金魚のように
口を開けたまま少女は真っ赤な顔で単語にならない
唸りをこぼした。
そんなの様子に少しだけ雲雀は驚くと、またすぐに笑みを浮かべてまるで捕食者のようにさらに詰めよる。
「行くところがないならうちに来なよ」
一瞬思考が停止した。恐らく同年代とは思えないような色気とかこの一文があまりにもパワーワード過ぎて
初期のパソコンより処理が遅い頭が追い付かないせいかも知れないが、本当に人間は頭が真っ白になるんだということを学んだ私。
……what?コノ人ハ何ヲ言ッテイルノ?
焦り過ぎて脳内ですら片言になってしまう。滝行のように冷や汗がドバドバ出てくる。
体中の血液が顔に集中したんじゃないかってくらい熱く
火照るのが分かってさらに恥ずかしくなった。
「いや……あのでも…め、迷惑ですし………」
と、言うのはバリバリ建前で本音は行ったらどうなるか分からないという恐怖感が強い。
確かに年頃の彼氏でもない異性の家に行くという気はずかしさとかもあるが
それよりも私の脳内に浮かぶイメージは、丸焼きにされる子豚の図だ。
きっと彼のような人が住む家というのは、常に薄暗く
稲光が走る魔王の城みたいなところかも知れない。
オカルト大好きだけど、ビビりヘタレな私は行ったら帰れまテンを実践する勇気と行動力は
皆無に等しい。
何かの
生贄か今日のワンコならぬ今日の晩飯になっちゃうかも!?とおびえていると
少女のコロコロ変わる表情を面白そうに見つめた少年が再度口を開く。
「群れてる草食動物は嫌いだけど……僕だって流石に小動物は襲わないよ」
取って食うわけじゃないと続ける彼の言葉にポカーンとする。
え、小動物?なるほど、雲雀さん流の若干気を使った家畜という言葉をマイルドにした感じか!と
一人で納得するも、家には誰もいないという彼の言葉に面くらう。
いやぁ~、未成年が二人きりか~~~!!逆にダメだと思うし外国ならアウトに近いぞーと
脳内で絶叫して、静かに私は視線をそらして遠くを見つめた。
その少女の瞳は年をとったように濁りをましたのは言うまでもない。
「
親御さんがいらっしゃらないなら、逆に失礼ですよ~」
HAHA☆と苦笑してみるも、自分の提案をことごとく否定してくるにいら立ったのか
少しすねたような呆れたような顔をして雲雀はため息をついた。
「じゃあ野宿する?」
「うっ……それは………」
「君が外でうろつかれた方が、風紀が乱れるし何かあれば内定にも響くよ」
一瞬、お前は教育指導の先公かと脳内で突っ込むも、確かに未成年が外でフラフラなんてリスキーではあるのも事実。
深夜
徘徊なんて事件、事故に巻き込まれやすいし万が一知り合いや先生に見つかるとまずい。
ちらっと視線をうつして、彼をうかがう。どうにか別のルートに
分岐できないか必死に頭を回転させた。
「あっ、そうだ!!リボーン君に手配してもらえないかな」
「……リボーン?――もしかしてあの赤ん坊のことかい?」
「あれ?なんで雲雀さん知ってるんですか?」
何か事情を少しだけ(少なくとも単なる家出ではない)と悟ったような顔を雲雀は浮かべると
すぐにその端正な顔立ちを崩して、視線を外してめんどくさそうな事情を
悟って舌打ちする。
「とりあえず、リボーン君にどうにか都合つけてもらう予定です」
ホームボタンを押し、さきほどまで開いていたLINEのリボーンの個チャを開き通信を押す。
「……なんで赤ん坊にかけてるの?」
「いや~、言えない事情がつい最近あって………。その結果、しばらく家を出ないといけなくなったんです。
というかまぁ、ヒキニートからすると一番の砦である自宅を追い出される恐怖とストレスは計り知れませんが
リボーン君がそうしろと言うので………」
なので、提案というかまぁ命令に近い形で家出しろと言って来た張本人に責任とってもらいます、と
力なく笑って、雲雀の顔を見上げてまた視線をスマホに落とした。
そんな少女の様子に、雲雀は面白くなさそうな顔で小さく舌打ちする。
そして細長い綺麗な指先を伸ばし、強引にリボーンに電話をかけていた私のスマホごと奪った。
本当に一瞬の出来事で面食らうが、すでに通話ボタンを押した後なので慌てて駆け寄る。
雲雀が耳元にスマホをかざしたタイミングでちょうどコールが終了してリボーンが取りついだ。
「ちょっ、ちょっと~!?何するんですか~?」
背が高いせいで、携帯を取り返そうとする私の必死のジャンピング奪取もきかない。
それどころか、器用にも電話しながらするするかわされてる気がする!?
「あっあの~、雲雀さん!!返してくださいよぉ~!!」
大事な話したいんですと
懇願するも、雲雀は必死の
形相を浮かべるを
冷めたいつものポーカーフェイスでチラッと見ただけで、すぐに視線をあげた。
「……だれかって?――僕だけど」
「いやっ、それじゃ多分伝わりませんよ雲雀さん!!」
なんなら
新手の電話詐欺みたいな応答だと脳内で叫びつつ
一向にスマホを取り上げて返してくれない彼にしびれを切らして提案する。
「わっ、分かりました!とりあえず返さなくていいですからせめて会話にいれてください!!」
お願いします~、スピーカーにして~と叫ぶ私に苛立ったのか、面倒に思ったのかは分からないが
呆れたような顔で一瞬少女を見やり、雲雀は小さくため息をつくとスピーカーにしてくれた。
リボーンの可愛らしい幼児声が教室に響く。
『どうしてのスマホで雲雀が出るんダ?』
「ですよね~。やっぱりまずそこですよね~。いやぁ、私もどうしてだろうなーって
すっごく思ってたんです~!!でも、雲雀さんガン無視なんです~つらいです~」
チラッと少しだけ呆れて雲雀さんを見上げるも、彼は全然こちらに視線をやらず
それどころか若干無視された感じで淡々と簡潔にリボーンに告げる。
「はしばらく外泊らしいね。――理由は面倒だから聞かないけどとりあえず僕のところで預かるよ?」
ああ~、言った、言った、ついに言ったァ!?
どうしてそういう若干誤解させる感じに持ってくの?そして私の否定聞いてなかったんですか!!
いつものように心で泣き叫ぶも、顔は困ったように眉を下げることしか出来ない。
くぅ、ヘタレには面と向かってノーと言える力が無いぜ!(イエスマンめ!イエスで人生かわんねーよ)
「っていうのは冗談ですよね~」
ね、リボーン君!!雲雀さんまで迷惑かけたくないのできちんと
匿ってくれるような
安心安全かつネット環境充実したところってないかな~?と電話越しに懇願するも
返答はあまりにも
無慈悲なものだった。
「それは助かったゾ♪――まだ住居の手配が出来てなかったからな!!
お前も強ぇーし……2、3日任せてもいいか?」
おっとぉ~、思わぬところからパンチが飛んできたぞー?
えぇ、待って……なんでそれ言うかな?なんでイエスしちゃうかな?
私の存在とかさ、私の意志ってもう無効なのかな?ねぇ、教えて神様…アルムの森の木。
心の中で血の涙を流しながら、味方だと思って安心していた相手からの
まさかの右ストレートに心ともども打ちくだかれてうなだれる。
神よ、仏よ…もしかして私の人生って地球上に味方皆無なんじゃね?(むしろ安全圏も少ない気がする)
何このハードかつ嫌がらせのようなクレイジー人生!!シムズの世界より手抜き低クオリティー。
リボーンの返答に、勝ち誇ったような笑みを浮かべると雲雀は三日預かると無慈悲に追加攻撃してきた。
「あ……でも手は出すなよ?」
んんんん!!そういうとこだけ紳士なのねリボーン君!!
でも、その紳士的なとこもっと早く見せて欲しかったお姉さんは!!
行動分岐が雲雀ルートに移る前に言って欲しかったなそれ!!
「流石に噛み殺さない……」
あ、私と同じこと聞いてるんだなー。やっぱりそこキチンと確認するよなーっ
右左確認、安全第一!!このまま死ぬと我が人生に悔いだらけだもんなーと涙を流しながら和んだのもつかの間
リボーンは、少し笑って意味を否定した。
「違うゾ!!――は可愛いから、襲うなって意味だゾ♪」