テオスディオの外に出るのは意外と簡単なことだった。
というか、町は強固な壁でおおわれているものの
それは昔の流刑地後の名残のようなもので
特に外出に不自由さは感じなかった。

神田の意見やファインダーの調査報告をもとに
街の中の奇妙な宗教よりもまずは
外に頻繁に出没するAKUMAの退治を先に行うべきだと判断し
街について早々だったが、すぐに街の周辺を馬車で移動する旅が始まった。

本当は馬でや徒歩での移動もアリだったが
街の周辺には民家も点在している。
万が一にも人が巻き込まれた時の避難も想定し
念のために馬車で移動していた。

しかし街へ入る時に使用した馬車は外から見えないような
箱型のアーチ状の屋根、装飾の施されたドアと優雅な装いだったのに……。

「今じゃ家畜の輸送だよコレ」

「文句言うな。これならすぐAKUMAの襲撃に気づけるだろう」

すぐに遠くで悲鳴と爆発が聞こえた。

「っ神田!!いまの」

すぐに馬車の荷台から身を乗り出して
音の方角を見れば、土埃に混じり
次々と逃げ惑う人影や宙を浮遊する物体の影。

「AKUMAだ!!」

神田の言葉を合図にすぐに馬車は停止し
逃げ惑う人々の誘導を馬車を操縦していたファインダーに任せ
AKUMAに対峙するように向かい合った。

「はははっ初めてのAKUMA!!」

「お前はまずは見ておけ!!」

すぐに刀を抜いた神田がAKUMAへと太刀をふるう。
対AKUMA武器の力を改めてキチンと見たのは初めてだった。

刀の太刀筋から出るイノセンスの特殊な攻撃に
思わずきれいだなと思った。

その間もその綺麗な攻撃の波に呑まれ
AKUMA達はろくに抵抗すら出来ずに消えていく。

「やはりな……ここ一帯のAKUMAは
ほとんどがまともに人間を襲ったこともねぇド素人だ」

めんどくさそうにコチラをチラチラ見る神田に
どうしたと聞けば、イノセンスを構えろと注意された。

「ええ、神田っちなら余裕なんでしょ?
ちゃっちゃっとやっちゃうかなーと思って」

「バカか?それじゃあ意味ねぇだろ……。
これはお前の実践訓練でもあるんだからな!!」

イノセンス武器を握れと怒鳴られて
しぶしぶ構える。

「イノセンス武器の扱い方は練習したんだろ?
あとはそれをやりゃあいいだよ」

「いや、でも…あっちも素人みたいだけど
こっちも素人よ?そんな上手くいくわっ…あ」

ツカツカと大股でキレ気味の神田が近づいてきたかと思えば
構えたイノセンス武器をもった腕をガシッと掴まれ

イノセンス発動の掛け声と同時に振り回された。

その次の瞬間には爆音とAKUMAの断末魔
そして遅れてくる衝撃と熱風。

「うそぉ〜。なんか滅しちゃった感じ?」

やったぜと神田を見れば無言で続けろと睨んできたので
しぶしぶもう一度イノセンス発動と唱えて武器をふるえば
その方向にいたAKUMAが一気に消えた。

「マジか!!え、大天才ここにあらわる!?」

発動を連呼しつつ、武器をふるいまくる。
イノセンス武器の攻撃がAKUMAにぶつかった時にあがる爆発音
響くAKUMAの汚い断末魔、攻撃の衝撃からくる反動の爆風

内心ほとんど攻撃してこない……というよりも
恐らく神田の言うとおり、人間に攻撃慣れしていない
AKUMAに申し訳ないなと思いつつも経験値は積ませてもらう。


「神田ッこれなら余裕じゃ」

「あれ見てもそれ言えんのか」

スッと指さされた方角のAKUMAを見やる。
なんだろう。今まで倒したAKUMAとは違う禍々しくて
そして大きい……。

「あれは…」

「レベル2」

神田が刀を抜き、すぐにイノセンスを発動する。
ドヤ顔に普段はうざいと文句を言っていたかもしれないが
こればかりは流石としか言いようしかない。

ほとんどレベル2が攻撃する隙も与えなかった。
ただ向き合って、こちらを確認した瞬間に
飛んできたイノセンス武器の攻撃はきれいに決まり
断末魔すらあげずに爆音と共に散っていく。


「キレイだ」

それをぼーっと眺めていたらなんだから意識が遠くなってきた。
AKUMAの爆発音を子守歌のように聞きながら
意識が切れる前に体から力が抜けるのを感じた。
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