「え……君たちどういうこと?」

なんで仲悪くなってんのと突っ込まれるもコイツのせいですと指させば
お前だろと言わんばかりに睨まれた。

コムイがため息をつく。この人もだけど
妹のリナリーと言い、美形の兄妹だなぁ。

「とにかく、任務は任務だし……二人でいってもらうよ」

「マジで?」
「変えろコムイ、こいつ以外なら犬でもいい」

めちゃくちゃ失礼な神田を睨みつけ、私もチェンジでと指をまわしながら
コムイに詰め寄れば、引きつったような笑みでまぁまぁ落ち着いてとなだめられた。

「それに私、ここに来てまだ二か月なんだけど?
任務って早すぎない?――え、社員研修もないのかこの教団」

ブラックだ!!労基に訴えるぞとわめくも、コムイにスルーされる。
ただやはり早すぎる初任務なのでベテランの神田をつけたと続けた。

「ベテランねぇ…でもこの人さ、絶対に後輩を育成する気ない人でしょ?」
そんな人と一緒に戦場に出されてみ?おいて行かれて即死ルートしか見えないんだが。

「神田くん、ちゃんの訓練もかねているからね?
エクソシストはそんなに数が多くない。それに最近AKUMAの数が増加している。
だからこそ、僕たちは少ないエクソシスト全員を即戦力に育てる必要がある」

この街周辺で変死が相次いでいるとコムイが説明した。
地図を指さして地名なども言われたが、聞いたことがない街の名前。
でも日本とか私が知っている地名も出てくることから
もしかすると私がいた世界と似ているけど別の世界線にきたのかも知れない。

あるいは、もっと過去の世界とか。
ほら、日本だって地名が変わっているところも割とあるからね。
地名どころか、少子化すぎて消えたり統合された市町村もたまーにあるけどさ。

「変死?病気とかが流行っているんじゃないの?」

同意するようにコムイがうなずいた。

「その可能性も否定しないけど、今のところハッキリと病気の流行は確認できていない。
それどころか、街の人たちが奇妙な死に方をしているから問題なんだ」

「奇妙な死に方?」

「変死しているのは、若者や子供ばかり。
ほとんどが病気を抱えているわけでも、何か事件に巻き込まれたわけでもない」

コムイは痛ましそうに瞳を伏せ、頭痛がするのかこめかみを抑えながら呟いた。

「これまでに分かっているだけでも100人近くが変死している」

「100人!?――それはえぐい」

「…で、その変死ってのはどんなのだ?」

こいつ、100人って聞いてびびらねぇのかよと神田を睨みつけるも無視される。
神田的には変死の方が気になるらしい。

「一日に最低一人、多いと三人程度が街のどこかでまるで
見せつけるように吊り下げられた状態で見つかる。
………身体の一部がない状態で」

苦々しそうに呟くコムイに、任務というだけでなく本当に
この件に関して心を痛めていることがわかる。

「ある者は頭、ある者は片腕や片足…目、中には内臓だけ抜かれた死体もあった」

「それがイノセンスの仕業だと思う?」

コムイに問いかければ分からないと首を振られた。
ただ、悲劇……特に人の死はAKUMAを産む。

ゴクリとコムイの説明の意図が分かり息をのむ。

「この街を中心に、AKUMAの襲撃事件が増えている。
僕の予想があたっていれば…おそらくこの街が」

「ある種の、AKUMA製造基地になっているかも知れない?」

ゆっくりとコムイに質問すれば静かにうなずいた。
だとすれば、こうしている間にもどんどん増えているに違いない!!

「その街の人たち、危ないんじゃ!?」

「いや、その街ではまだAKUMAの出没は聞いていない」

「でっでもそれだって時間の問題じゃ「それはないだろう」…な!?」

隣の神田の言葉に弾かれるように、睨めば涼しい顔で淡々と説明される。

「いいか?AKUMAを作るには、第一に人間の体と魂が必要になってくる。
もし狭い街でAKUMAを襲わせてみろ?あっという間にAKUMAに必要な人間がいなくなるだろ」

サーッと青ざめる。その説明だと、まるでその街の人間たちは家畜同然じゃないか。
AKUMAを作るための材料、そしてそれを用意するための箱庭。

そしてそんな街に今から乗り込むことにハッと気が付き慌てる。

「ちょっちょっ…え、うち新人よ?そんなAKUMA発生地域に行かせていいの?」

涙目でコムイに詰め寄れば、落ち着いてと着席を促された。

ちゃんの言いたいこともわかる。
ただ、逆を言えばこれは君にとってもチャンスになるかも知れないよ?」

ね、神田くんとコムイが神田にふれば神田は盛大に舌打ちしながら
コムイの言いたいことを律儀に少女に説明する。

「確かにAKUMAの数は多いかもしれねぇが、どれも生まれたてだ。
AKUMAの中でもレベル1と言われ、その中でも街にいるやつはほとんど人を殺したことがねぇ。
ほとんど赤ん坊みてーなもんだ。――つまりそいつらを、殺しまくって
場数をつめってことだろコムイ」

「いっ…言い方はアレだけどね」

なるほど、トスバッティングみたいなものか……。っていやいや!!

「ふっ…不安なんだけど!?」

「だからこそ、ベテランの神田君をつけたんだよ♪」

行っておいでと手を振られ、神田に強引に腕を引っ張られ
私はどうあがいても拒否権はないんだなと知った初任務前だった。 Page Top Page Top