空にピカッと何か光りが散った。
突然の閃光せんこうになんだとAKUMAと私達は夜空を見上げると
いくつもの光の筋が落ちてくる。

まるで夜空の星が降り注ぐように。

「きれい」

怖いというよりも神々しい美しさがあった。
しかもその光の筋は矢のように私とAKUMAに降り注いだ。
指輪が呼応こおうするように穏やかな光を放つ。
私にあたってもなんともないその光は、一瞬でAKUMAをつらぬいて光の中に溶かした。

AKUMAにぶつかると星が散るようにパッと瞬いて消える。
AKUMAも苦しそうにうめきをあげるが、すぐに灰になって消えていった。

「そうか……イノセンスが」

アレンが抱えていた私をおろしてくれた。
訳も分からずに消えていった星を見つめていた私に手を差し出すアレン。

「今日からエクソシストとしてよろしくお願いします」

ハッと我に返る。――え、今この子エクソシストとかいった?

「え……私が?」

そのようですとアレンも嬉しそうだけれど少しだけ困ったような
複雑な表情で私の手をとって告げた。

「これから僕たちと黒の教団に向かいましょう」

………
……

「やっと着いた」

地獄みたいな断崖絶壁だんがいぜっぺきをのぼらされるのかと迷ったが
初見で分からずにのぼったアレンいわく地下水路からエレベーター式にあがれるらしい。

なるほど、内部の人間がいれば比較的簡単にいけるけど
部外者はほとんど立ち入ることができないのか。

ってかまって、現代に帰る私の野望どうなった!?
なんか行くとこないし、1人は確かにこわいしAKUMAにまた会ったらやばいのは分かる。
それに内心、なんか楽しそうだしいいかなってついて来ちゃったけど
ここに入ったら私もAKUMAをバスター(退治)する側にまわされるよね?
エクソシストは貴重だとか選ばれしとかなんちゃらで中二病がうずいたけどさ
命と引き換えの中二病なら命を選ぶよ!!まだマトモだから!!

しかしアレンはともかく神田が逃げないように見張ってやがる。
渋々と教団を案内されることになり、適合率とやらまではかられた。

「適合率5%か」

かなり低いらしいが私の最近の数学のテストの点数より高いことに感動したのを返せ。
イノセンスを受け入れていないとかなり悪い数値が出るらしく
私は典型てんけい的にそのパターンらしい。へブラスカという女性?にも危ないと言われたが
どう危ないのか分からなかった。――とりあえず適合率が低すぎるのでいったん預かるらしい。
そういうことも出来るなら一生あずかっておいて下さいと言ったがムシされたのがムカついた。

「武器どんなのがいい?」

アレンと神田とは別れて別の化学班という人達に誘導ゆうどうされながら
色々と説明をうけていると武器の提案をされた。

「いやぁ、ぶっちゃけまだ戦う気とかサラサラないんですけどぉ」

「うーん。分かるけどね……でも僕たちも仕事だからさぁ」

「はぁ…えっとぉ、じゃあとにかく敵をボコボコにできるやつ下さい。
あっあと遠距離もいけそうなやつ……あっ、でもか弱いんで持ち運びが便利だとありがたいっす」

化学班の人達が武器制作するのか……研究だけじゃなくて大変そうだなと思っていると
服の話題になったので一気にテンションがあがった。

「服!?え、決めていいんですか?えっとぉ…ミニスカもいいけど
あ、でもパンツスタイルもいいよね~。色見本とかデザイン見本ないんですか?」

武器の適当さと服の妙なこだわりに化学班はおされつつも
少女の要望を取り入れながら2時間ほど黙ってメモをとり続けた。

………
……

「ここが私の部屋か」

教団内は広いけど絢爛豪華けんらんごうかというよりも病院とか施設に近い感じだった。
なんていうか綺麗ではあるけど豪華さはそんなになくて
最低限度、人が暮らせるスペースがあるって感じかな。
もちろん私みたいなパンピー(一般人)が通された部屋なんてごく一部だろうけど。

「はぁ……つかれた」

部屋にあったシングルベッドにダイブする。
エクソシストだからもう少し優遇ゆうぐうされるかと思ってたけど
なんだか思ってたのと違うな。――まぁ多少周りの目は気になったけど。
なんでもエクソシストじたいもここの人口的に少ないが
女のエクソシストはもっと少ないらしい。

あ、でも同年代くらいの女性エクソシストもいると聞いたので安心した。
言葉の壁は……どうにか英語つうじるならいけるかも。

しかし……あんだけエクソシスト様ともちあげられたから
部屋も多少は豪華かなと思ったが意外と狭いことに驚く。
まぁ部屋数にも限りがあるのはわかるけどね。
それでも人が生きていける最低限のスペースもある。
トイレとシャワーもあるし、女子には必須の鏡にクローゼットも簡易的だが備え付けであった。

枕元の灯りを消して目を閉じた。
これからどうなるんだろう。――私、帰れるのかな?

これから訪れる悪夢も知らず、眠りに落ちた。

翌日、昨日会ったコムイという人に呼び止められると
可愛らしい少女を紹介された。長い黒髪をツインテールにまとめて
くりっとした二重の黒目がキュートなアジア系の少女。
ミニスカートからのぞくスラリとした健康的で長い足は同性でも憧れるほどだ。

「はじめまして、リナリー・リーです」

声も可愛い。同年代のエクソシストがいるって聞いたけどまさかこの子!?
一緒に並んだら比較されないかな……悪い意味で。
朝食食べすぎなきゃよかったと後悔しながらも差し出した手を握り返した。

「私は です」

「ファーストネームはね?よろしく!!
同世代の女の子がいないから友達になりたいわ」

弾むような可愛い声に、私もなんだかつられて微笑む。

「うん。こっちこそ心細かったから嬉しいよ。ありがとう♪」

ニコッと微笑むと、急にリナリーが真っ赤な顔になった。

「あれ、なんか言っちゃった?」

「えっ…ううん!!――その、が美人だったから照れちゃった」

はい、かわいい。誘拐したい。
コムイもなごんでこのやりとりをみてたけど途中から真横でリナリーの方が美人だよと
呪文のように唱えているのであとでしばく……いえ、お話しようと思う。

私とリナリーはすっかり打ち解けながら
コムイと別れた後(仕事を抜け出してたらしく、化学班の人に引きずられていった)
他のエクソシストを紹介してもらうことになった。

「アレン君と神田には会ったのね?」

「うん。あっ…そういえばあの2人もエクソシストなんでしょ?
アレンは寄生型ってわかるけど、神田は…刀がイノセンスでOK?」

私を助けた時の抜刀ばっとうを思い出して質問するとリナリーはうなづいた。

「ええ。神田は私と同じ装備型ね」

「寄生型は身体の一部がイノセンスで、装備型は武器をもってるんだっけ。
ん?リナリーはこんなに細いのに武器とかもてんの?え、お姉さん心配だけど」

ドンッとおしたら倒れそうなほど細いけど……。
ええと照れつつも、ニーソックスを指さした。

「これが私のイノセンス…黒い靴ダークブーツよ」

え……これで戦うの?
冗談でしょみたいな顔が通じたのかちゃんとしたイノセンスだからと
真っ赤な顔で抗議されたので私もその気迫きはくにおされながらうなづいた。

確かにあのおみ足に踏まれてみたら別の意味で昇天するかもな。
じぃーっと興味深げに見ているのがバレて今度見せるからと約束された。

「いいの?じゃあもし任務ってやつがあったら一緒にいきたいね!!」

女子会だとハシャぐけど、任務は仕事だよと釘をさされた。
そんな真面目な君も可愛いぜ。

「とりあえず……今、教団ホームにいるエクソシストはこれくらいかしら」

「ありがとう♪――ねぇそういえばなんでここをホームって呼んでるの?」

職場は職場だし、ホームって家とかふるさとを指す時に使うよね。
リナリーは驚いた顔をした後、すぐに少し悲しそうに眉をさげて笑った。

「ここが私と兄さんにとっての家みたいなものだから」

その笑顔は美しいけど、とても悲しそうで胸が少しだけ締め付けられた。

ポツポツとリナリーの過去を話してくれて最初はこんな私が聞いていいのかと戸惑ったけど
ここにいる皆は知ってることだからとまた困ったように笑った。

ホームか。ここしか家がない彼女と家は別にあるけど帰ることができなくて
ここを頼るしかない私。――悲しみを競うつもりもないけど
どっちの悲しみも私達にしか分からない辛さがあると思う。

だけどここにきた当初は私が世界で一番かわいそうな子くらいの心情だった。

ずうずうしいけどね。――でもリナリーいわくエクソシストや
ファインダー達の多くは家族や大切な人をAKUMAの犠牲になった人達が多いらしい。

それにエクソシストはその意志とは関係なくイノセンスとの適合が確認されれば
ここに連れてこられるらしい。……選ばれし存在とか貴重だとか言われたけど
ていのいい神様の奴隷じゃないかと少しいじけた気持ちになった。

-----第一章END------

【あとがき】

エクソシストになって神田をいやがらせしたり
アレンに恐怖したり、リナリーときゃっきゃうふふしたり
ラビとイタズラ三昧ざんまいしたいと思って連載をはじめましたが
なかなか進まなくてすみませんでした><

第二章からはエクソシストとして活躍していく夢主が書ければと思います☆ Page Top Page Top