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「そうだよ!!流石、紳士は違うね!!」

「ありがとうございます……。本当はあなたの言うとおり、僕も……いや、僕たちも出来れば悪魔を倒したくはないんですよ。
ただ、悪魔はほかの……あなたのような一般人まで傷つけてしまう。それによってまた新たな悲劇が繰り返される」

儚げにどこか遠くを見つめるように細めた瞳。私の方がおそらく年上だと思うけれど、この子の言葉の方がどこか重みがあった。

「あなたは、大切な人達が傷つくのをだまって見過ごしていられますか?」

優しいながらも、どこか悲しげな問いかけに私はうつむいてしまうだけ。

こんなん言われたら、ムキになることも……泣くこともできないじゃない。
一瞬、いたたまれずに言葉をにごしていた私はふと思い出したように叫んだ。


「――つか……どうなってんのこの世界は!?」

私は確か昨日ふつーに学校から家に帰ってきて……んで昨日の残りのご飯をチンして食べようとしたらワックスしたばっかの床にすべって
テレビのかどに頭ぶつけただけなのに!!!!(もうこの段階でヤバいと思うけど…)

ぐるりと見渡す視界は少年と青年と森だけなんだけど、これが日本にあるような森って感じじゃなくてまるでヨーロッパの森って感じなのよ。

しかも、頭を打った後に急にここって……状況が私じゃなくても理解できない。
きっとアインシュタインせんせーでも理解不能な事態だ。

日本とは違った洋風な景色に目を細めながらパニックでパンク寸前な頭をどうにか動かそうと試みるが
流石に私の対応能力の高さでも、いきなりこんな世界に…しかもましてや身一つで帰るあてすらないなんてどうしようと狼狽うろたえる。

でもどうしよう。この人達を頼るわけには……。
――この白髪ボーイはともかくとして・・・…あの黒髪美人と居たらいろんな意味でもたない!!

不安げな私を気づかってか、白髪の少年は大丈夫とほほえんだ。

「僕の名前は、アレン・ウォーカーっていいます。こっちは、神田かんだ

アレンが神田を指差すと神田はぶっきらぼうに鼻を鳴らす。

「フンッ。それより・・・…さっさといくぞ。俺たちの任務を忘れたわけじゃないだろうな?」
アレンを置いて神田と呼ばれた黒髪美人は森の奥の方に歩き出した。アレンもあわてて神田に叫ぶ。

「ちょっと!!レディを置いて行くんですか?」

遠く森で神田のほっといても死なんという声が響いた。

「いたわれよ・・・黒髪美人!」

決めた。ふへへへっ・・・…あいつのあだ名はピーマンに決定したぜ!子供たちに一生嫌われてけばいい!!

意地の悪い笑みを浮かべて、歩くピーマンの後ろ姿を睨みつける。ウン○踏めばよいわバーカ。

アレンは神田が消えた方と私を交互に見つめるとため息をついて言った。

「すみませんが……あなたも任務について来てくれませんか?」



一瞬わたしの時間がフリーズした。



「はっ?…任務……ですか・・・」

いやいやいや!!ここで一人ぼっちで家までの帰り道を捜索そうさくするよりかはマシだよ!!うん・・・…それだけは言える。
確かに……ヨーロッパの森の奥地に置いてかれるこの心細さは尋常じんじょうじゃないからね。

まるで千と千尋の神隠しって感じに急展開なんだけど………。
舞台がアジアっぽい場所からヨーロッパに変わると更にホラー感が増すね!!(千尋ちひろえらいわ)

でも・・・…よく考えてみるとさ。――この人達に付いて行くって事はさ、さっきの悪魔みたいなワンちゃんと何か遭遇そうぐうする事になるじゃん!!

つか、さっきまでこの人達……そのワンちゃんをバスター(退治)するとか言ってたからね!!

ちゃんは忘れてないからね!!その言葉を!!

何でよりにもよって、あんな……この世の汚いモノ&不気味なモノをミックスしたようなワンちゃん達(悪魔)をバスターズしに行かないと行けない訳!?


百面相でなやんでいる私を見るに見かねたアレンは真っ黒な笑顔で説得した。

「この森で・・・…オオカミのエサになりたいんですか?」

いや・・・・・・狼はお前だろう!!(私の勘がこいつが一番この森で危ないとさけんでいる)
しかし、頼るほかない私がそんな事を白髪のブラックスマイルを浮かべる魔王様(今、命名)の前で言える訳もなく・・・・・・。


結局、ついて行く事になりました。ああ・・・・・・お家が恋しいよ・・・。
心の中で私はそっと血の涙を流す。



・・・・・・

かれこれ歩き初めて2時間。
やっと森を抜けられて、遠くに人里が見えてまいりました。
もう汗だくで、シーブ○ーズのCMもオファー断るレベルで手に負えない感じ。
広瀬す○ちゃんみたいにイケメンとさわやか青春は、こんなサウナか滝行の後みたいな女には一生おとずれないと我ながらに思った。

しかし・・・この人達の体力すげぇな。
ピーマン(神田)や魔王(アレン)何か汗はかいてるものの……ぶっちゃけ、まだまだ余裕そうだ。(何か少しジョギングした後的な余裕が)

こっち何か明日絶対に筋肉痛確実だからね!!ああ・・・サロンパス~~~!!

今、一番ゲットしたい順で言ったら

1位 家へのパスポート
2位 雨風しのげて寝れる場所(出来れば天蓋てんがい付きのお姫様ベッd(殴))
3位 ご飯
4位 サロンパス
5位 肩たたき券

見ろ!!サロンパスは4位にランクインする程の必須アイテムだぞ☆

さて、ついて来たのはいいんだけれど、これからどうしようか。
私は、どうやら歩きながら出来事を整理した結果……当たり前だろうけど、この世界の住人ではないらしい。(しかし言語は通じている感じ)

うん。私の世界は日本だし……こんなヨーロピアンな建物見たことないし……。
――いや、パソコンとかテレビなんかの画面を通してならあるけど。(最大の家族旅行も沖縄くらいよ、まず日本から出てすらいないからね)

現実的に考えると何で日本の私の家からこんな場所まで来たんだって事になるんだけど。
ヨーロッパまでは少なくとも5時間?……いや……もっと時間はかかるはず。

だけど、目を覚ましたらここに倒れてた。ぶっちゃけ……あんまり超常現象とか……そんな非科学的な事は信じないタイプだけどさ。

こんな、身をもって体験しちゃったら……ねぇ。

そういえば、一時期トリップ夢とかハマってたな、懐かしいわ。
何だっけ?……ああ。アニメとか……の世界に移動する事だっけ?

とりあえず、そのトリップで来たのなら・・・帰る方法もトリップでしか帰れないよね。
たいていの場合は神様に手違いで殺されたりすることが多いんだけど……まさか、私も現実世界で死体になってたりとか……はは、笑えない。


私がずっと相当思いつめた顔をしていたのか。――はたまた、彼が紳士すぎるのか……白髪の少年が私の顔をのぞき込んで安心させるように大丈夫と微笑んだ。


「とりあえず・・・夜もふけて来ましたし。――そろそろ、どこかで宿を探しましょうか」

アレンの言葉に無言で私はうなづくと、前にもこの町に来たらしい神田を先頭に人里の明かりが灯る方へ歩いていった。
人里に近づくと、なにやら今日は近くでお祭りがあるらしかった。
どんちゃん騒ぎをする住民や遠くでラッパのような物の音が聞こえる。

今日は生憎あいにくほとんどの宿が遠くから来た観光客でいっぱいで、最後に来たのがとてもみすぼらしい宿屋だった。

アレンと私はフリーズして見つめる。神田は泊まれたら何処でも良いというようにズカズカと中に入っていった。

いやいやいや!!それにしてもさ……こんな綺麗なヨーロッパにこの汚い宿ってないだろ!!周りからだいぶ浮いてる気が……。

まだ米軍がノリで立てたほっ建て小屋の方がマシな気もしないでもない。


宿の壁はいたる所ボロボロに崩れていて、その屋根からは伸びきったバラと思われる植物が
たれ下がるように不気味に宿全体に絡み付いていた。

流石に、ホラー苦手なアレンとこんな汚い所に慣れていない私は……中に入るのをかなり迷った。

「どうかしたかい?お客様……」

「ひっ!!でたぁああああ!!!!妖怪ハゲじじいぃい!!!!」

思わず、エアーでもこ○ちソルトをお見舞いする。
それでも消えないハゲじいい。

「よっ…?妖怪……?」
一瞬、私の叫びにつられてビクッとしたものの、すぐにあきれた声をこぼすアレン。

南無阿弥陀仏なむあみだぶつをとなえながら土下座する私にアレンはあきれきった目で見つめてくる。
ちょっと、さっきまで一緒にこわがってたくせに!!

宿のおじさんは無表情を崩さずに私の顔を無言で見つめると中に戻っていく。それをアレンは律儀にあやまりながら追った。

残された私の横を冷たい風が吹き抜ける。


結局私もついて行く事にしちゃいました☆(テヘ )

inボロ宿屋。


……
今、私たちは小さな暖炉の前を囲んで食事を取っています。
何か、この一室しか開いてなかったらしく・・・しぶしぶ此処に落ち着いた。


「うーん…。意外と料理美味しいね。」
「そうですよね。所で…ずっと気になっていたんですけど、さんは」
でいいよ。」
は、どこの国の人何ですか?」

ハイ、来たー!!来るとは思ってたよ。うん……。

「あー…えっとですね……日本?」
「(何で疑問系?)そうですか。じゃあ、神田と同郷ですね♪」
「チッ」

ふーん。まぁ顔がアジア系だとは思ってたけど……この人日本人なんだぁー。

「それにしても…どうして、この国まで来たんですか?後、英語とてもお上手ですね?」

うわっ。一番難しい質問だな。しかも、どうやら私は英語がここにきて母国語と同じようにペラペラになっているらしい。すげぇよ、これが中学受験で生かせていれば(英語ギリ10点台)

「うーん……。あのね…今からいう事は夢のよーなホントの話なの。心して聞いてくれるかい?――ボーイズエンドガールズ!!」
「(女性は居ないんだけど)……はい。」

私はとりあえず、落ち着いて深呼吸して二人を見つめた。


「私…実は、この世界の人間じゃないんです!!」



一瞬、時がフリーズした。

あれ?これはボケでもなく本気なんだけどなぁ………。

いつもは仏頂面ぶっちょうづらの神田も目を見張って見つめる。

えっ・・・私・・・・・・もしかして、引かれてる!?ドン引きされてる!!
いつもの自分の痛い発言を棚にあげ、悲劇のヒロインぶってハンカチをかみしめる。


「そう・・・ですか」

アレンも少々納得の行かない様な顔で・・・そして若干じゃっかん疑い深い目で見つめてきた。

ああ……その視線が痛いよ!!私まで髪の毛白くなりそうだからやめて☆


「うーん。まぁ…信じなくてもいいんだけど……。私もさ、家に帰りたいんだよ!!マジここドコって話なわけ!!」

ああ・・・何か必死にペラペラと口から言葉があふれてくる。
とりあえず、私の表情を探っていたアレンも、私のただならぬ表情からウソでは無い事を分かってくれたのか
それともキチガイに付き合ってられないとふんだのか、困ったような笑みを浮かべながらも最終的には納得してくれた。

まぁ、二人も疲れてたし……受け流された部分も大きいけど。


その時だった。ドアがギィッと不気味に開く音がしてビクッとして振り返ると、怖いぐらいの無表情であの宿屋の男がそろそろ寝ますのでとだけ告げに来た。

早いなおっさん、夜はまだこれからだぜ!!という言葉を飲み込んで頷く。
確かにここの宿はおじさんだけで営んでいるようで、そろそろ自分も寝るので何かあれば朝まで待つか、緊急時きんきゅうじだけ起こしに来てくださいと告げて戻って行った。

室内に沈黙が流れる。ぱちぱちと暖炉の火だけが小さくはねている。

はー……こんな不気味な宿で寝るのかー。まだ正直納得いかない。むしろ、どんどん野宿の方が良さげに見えて来たわコレ。何か、いろいろ聞きなれない虫の鳴き声とか聞こえてきて、身震いする。

何か、修学旅行で泊まったメッサ対応が悪くて不気味だったホテルを思い出しながら……小さく、幽霊とか出ないよなぁ…とつぶやくと隣に寝転がっていたアレンもビクッと反応した。

ほほう、こやつ……お化けが苦手か。よっしゃメモった。何かあったら報復にこのネタを使おう。
実は自分もだいぶヘタレなことを棚に上げつつ、ニヤリと悪い笑みを浮かべる私。

私もゆっくりと、横になる。神田だけは壁に背中を預けながらおくびょうな二人を笑った。

「ハッ。こんな場所じゃあ・・・何か出てもおかしくないだろうが・・・」

何かって何ぃ!?隣のアレンを見るとかわいそうな程震えている。
っつか、震えすぎてもう残像しか見えないんだけど!?

あんなワンコ(悪魔)達よりも恐ろしいモノがこの世にあってたまるか……と思いながら疲労からか、すぐに眠りに落ちた。 Page Top Page Top